お腹の症状とストレスの悪循環
実際、ストレスと腹痛の関係を調べた研究では、ストレスレベルが1ポイント高くなると、健常者は腹痛のレベルが0.02ポイントの上昇だったのに対し、過敏性腸症候群の患者では0.10ポイント上昇していたことがわかっており、過敏性腸症候群患者はストレスが腹痛につながりやすいことが報告されています(Vork et al., 2020)。
さらに最新の研究では、過敏性腸症候群の患者において、ストレスが高まった後に症状が強くなるだけでなく、症状が強まった後にストレスも高くなるという双方向の関係が確認されました(Yunusova et al., 2026)。つまり、過敏性腸症候群では、ストレスがお腹に影響するだけではなく、お腹の症状がストレスを生み、そのストレスがさらに症状を悪化させるという悪循環が生じることがあるのです。
睡眠障害のリスクが約2.6倍
過敏性腸症候群による影響は、腹痛や下痢、便秘といったお腹の症状だけにとどまりません。仕事中のパフォーマンスや睡眠、心の状態など、日々の生活にも影響することがわかっています。
特に仕事への影響は無視できません。過敏性腸症候群の人のうち、85.6%が仕事中のパフォーマンス低下(プレゼンティーズム)を経験し、28.5%が病気を理由に仕事を休んでいました(Goodoory et al., 2022)。また、過敏性腸症候群によって失われた労働時間は週平均1.97時間に上ることも報告されています。
睡眠との関連も指摘されています。約6万人を対象としたメタ解析では、過敏性腸症候群の患者の37.6%に睡眠障害がみられ、健康な人と比べて睡眠障害のリスクが約2.6倍高いことが示されました(Wang et al., 2018)。腹痛やお腹の張りなどの症状が睡眠に影響するほか、睡眠の乱れが翌日の体調やストレスにも影響を及ぼし、悪循環に陥る可能性があるのです。

