ガラパゴス・ケータイ、略してガラケーという言葉は、当時世界一のシェアを獲得していたノキアなどに対して使われていた。
これを大失敗だと捉える向きもあるが、私は一概にそうはいえないと思っていた。
彼らは、成長する新興国の市場を攻めるために低価格品が必要だと考え、普及品の開発生産体制に力を入れていた。その間にスマートフォンが出て、市場のニーズはそちらにシフトしてしまった。
すなわち、ガラパゴスといわれたことを意識しすぎて、イノベーションを怠った。こちらのほうが失敗なのだ。
ガラパゴス化というのは、個性が際立っているということでもある。日本企業がむしろガラパゴスに邁進していたら、今頃サムスンのポジションは、日本の家電メーカーが担っていたかもしれない。
なにせ、日本人は世界一製品やサービスにうるさい消費者だ。そのうるさい消費者に高く評価される製品は、世界の富裕層が注目する。グローバル化なんていわなくても、勝手にグローバル化していく、そんな製品はたくさんある。
また、内需で成り立つ産業なのであれば、むりにグローバルに展開することはない。
少子高齢社会になって、市場が縮小していくことを懸念する声もあるだろうけれど、人口が少なくなるのに合わせて、産業が縮小していくならそれでバランスがとれるだろう。
内需でも成り立つような財務体質に変えていくほうが建設的だ。
アニメ監督の宮崎駿さんもあるインタビューで、「日本国内でペイラインに達するから自分たちのアニメーションが成り立つ」とおっしゃっていた。基本的には海外に売り込むことなど考えず、日本の子どもたちのために作品をつくっている。
その結果、海外でも評判になるのだ。海外で成功しているアニメーションはほとんどがそういう作品だ。「ポケモン」も「キャプテン翼」も、元は日本の子どもたちだけを意識してつくられている。外国向けを意識してつくった作品は、人気が出ないことが多い。
ガラパゴス諸島の固有種の動物たちは、観光資源として大人気である。独自に進化したことで、希少価値が上がる。
そんなふうに、日本で独自の進化を遂げた製品が一部の熱狂的なファンを持つことは、十分あり得る。
※本連載は『おれが浮いてるわけがない。』(五十棲剛史 著)からの抜粋です。