個性はビジネスでは得か、損か? 強烈な個人は組織では潰されるのか? 多くのビジネスマンに支持されている書籍『おれが浮いてるわけがない。』(五十棲剛史著)の著者で船井総合研究所常務が個性とビジネス・組織について赤裸々に語る。周囲から“浮いてしまう”ほど強い個性ながら、他人の10倍稼いできたコンサルタントが考える、いまの時代のビジネスマンの在り方とは?

日本人は、世界的に見ればかなり浮いているのではないだろうか。

車が来ないにもかかわらず、律儀に信号を守る。海外から来た人は、電車が3分おきに時刻表通りに走っていることに驚嘆する。ラッシュ時には、次発の列車を待つ列と、次々発の列車を待つ列がピシっと分かれ、順番を抜かすこともない。

こんなに秩序が保たれている国は、他にないだろう。

この浮いている日本人の姿を、世界的に知らしめたのが、東日本大震災だ。

寒さに震え、食料も乏しいなか、日本人は暴動も起こさず、むしろ人に譲る姿勢すら見せた。災害時にもかかわらず、略奪がほとんど起きないという事実を、海外のメディアは頻繁に報道した。

もともと、日本ではなくした財布が中身入りで交番に届けられることが多いなど、モラルが非常に高い。互いへの信頼感が厚いのだ。

JR南浦和駅で女性が車両とホームの間に挟まれ、その場にいた乗降客が電車を押し、隙間を広げて救出するという出来事があった。車両の重さはおよそ32トン。駅員も含め40人以上の人が協力し、女性が出てきたときは拍手が巻き起こったという。

このニュースはアメリカ、イギリス、イタリア、中国、ロシアなど各国のメディアでも報道され、「うちの国だったらみんな写真を撮って見物しているだけだ」「英雄的行動だ」「日本だけで起こり得ること」「どんな教育を受けたらとっさにこんな行動ができるのか」など称賛の声が上がっている。

日本人は歴史的に、自分のためでなく、人のために行動できる精神が備わっているように感じる。武士が「将軍様のために」と言うときは、そうしたほうが自分の身のためというのではなく、本当に忠義を誓っているのだ。中世ヨーロッパで契約によって働いていた傭兵とは、そもそもの動機が違う。