とはいえ、スカイツリーをきっかけに観光資源としての下町が再認識され、町が活性化していけばそこに仕事が生まれ、人が集まる。十分に変化の余地はあるはずだ。実際、それを見込んで、スカイツリーの建設が始まった頃からマンション分譲は増加している。
「これまで、いわゆる下町エリアでの市場は中小のデベロッパーが中心で、しかも単身者向きのワンルームが大半を占めていました。城東、城北地域は地方から首都圏に流入してきた人が、賃料の安さと都心への足回りのよさで、最初に居住することが多い地域です。そのため、市場自体が賃貸中心になっていました。しかし、スカイツリー以降、大手デベロッパーによる住宅開発が進行し、なかには坪250万円と都心並みの価格を付ける物件も登場しています」
これまでよりもグレードの高い物件が供給されていくことで、賃料、住宅価格の東西格差は少しずつ是正されていくのだろう。
これらの動きに呼応するように、下町エリアでは再開発の動きも加速している。スカイツリーのお隣、曳舟駅(墨田区)では開業以前に再開発が行われ、町並みが大きく変わったし、葛飾区では新小岩駅、立石駅周辺で、江戸川区では小岩駅周辺で、荒川区では三河島駅周辺でそれぞれ再開発が予定されている。また、京成押上線、東武伊勢崎線の高架化工事も行われており、渋滞解消とともに新しい空間が生まれようとしている。
ちなみに前述の新東京駅構想は都営地下鉄浅草線の押上駅~泉岳寺駅間の約11キロに新たなバイパス地下鉄を建設、地下に新東京駅をつくるというものだが、実はここに京成押上線の高架化も影響する。成田へ向かう京成線の高速化には高架化が非常に意味をもつからで、交通網の改善は全体を底上げする効果もあることがよくわかる。
こうした開発が積み重なっていけば、「いずれ新たな都心近くの分譲地として、湾岸とともに市場を牽引していく存在になるでしょう」(中山氏)。