あえて「終戦の日」直前に決行した
ロシアは日本を「非友好国」に指定し、首脳や閣僚レベルの対話は途絶えた。外務次官級協議も打ち切られ、事務レベルの接触さえ乏しくなった。
こうした中、プーチン氏は、2024年1月、極東ハバロフスクを訪問した際、クリル諸島(北方領土と千島列島)について、「残念ながらまだ行ったことはないが、必ず行く」と公言していた。そして今回、ついにその予告を実行に移した形だ。
訪問のタイミングには、冷徹な政治的計算が透けて見える。日本が第二次世界大戦の終戦の日とする8月15日の直前を選んだのは、ロシアが「戦勝国」として北方領土を正当に獲得したという自国の歴史観を誇示し、対露制裁を続ける日本に揺さぶりをかける狙いがあることは想像に難くない。
事実、プーチン氏は、前日の12日、極東サハリン州で始まったロシア海軍太平洋艦隊の軍事演習を視察し、海軍幹部らとの会合で、北方領土の帰属について「第二次世界大戦の結果により生じた現実として、国際文書に明記されている」と述べた。国際法上も疑義がある一方的な主張であり、日本の返還要求を退ける立場を改めて強調したものだ。
高市首相も茂木外相も抗議したが…
この事態を受け、高市早苗首相は13日、首相公邸で記者団の取材に応じ、「歴史的にも国際法上もわが国固有の領土だ。日本国民の感情を傷つけるもので、断じて許容できない」と強いトーンで抗議した。
ロシアのウクライナ侵略により日露関係が厳しい状況にあるなかでも「できる限りの努力を払ってきた」と強調し、茂木敏充外相も同日、外務省にノズドレフ駐日大使を呼び出して厳重に抗議した。日本政府は、過去のメドベージェフ氏の訪問時よりも深刻な事態だと受け止めたのだ。
しかし、ロシア側は日本の抗議に対して冷ややかな対応を見せた。ロシア外務省はマリア・ザハロワ報道官名義で声明を出し、日本の抗議について、「憤慨を禁じえず、断じて容認できない」と逆非難。
「あつかましくも、ロシアの指導者が自国内のどこを訪問すべきかを指示するに至った」と反発し、在日ロシア大使館もSNSで「大統領の国内訪問は主権行為であり、外国との協議事項ではない」と一蹴した。
なぜ、日本は足元を見られ、隙を突かれたのか。その背景には、高市政権下で定まっていなかった「対露外交のブレ」がある。

