日本の実質賃金が伸びない一方、2倍に

需要サイドに関していえば、韓国は成長の果実を適切に労働者に渡した。労働時間あたり実質賃金が1990年から上がっていない日本とは異なり、韓国の実質賃金は、同じ期間に2倍になった。じつのところ現在では、韓国のフルタイム労働者は日本のフルタイム労働者より若干高い賃金を受け取っている(図表3を参照)。

これは、韓国では生産物に対する需要が十分にあるので慢性的な財政赤字に依存する必要がないことを意味する。貿易収支を黒字にするために為替レートを恒常的に低く抑える必要もない。

だからといって、これまで韓国がすべて適切にやってきたという意味ではけっしてない。むしろ逆で、韓国銀行は、十分な改革を行なった場合には、2025年から2040年の成長率は現在の予測を1パーセントポイント上回るだろうとしている。

「近代的設備への投資」が大正解

韓国では1960年に急速な工業化が始まったが、当時は世界で最も貧しい国の一つだった。先進国への道は、近代的設備への投資額のGDPに対する割合を増やすことだと考えられていて、その考えは正しかった。何といっても、トラクターを使う農家は動物に頼っている農家よりも多くを生産できる。近代的な建設機材や工場機械を使って働く労働者もだ。

GDPから投資にあてる割合を増やすことは、賃金に振り向ける割合が少なくなることを意味する。しかし、経済が絶対額で非常に速く成長したため、人口の大半にとって賃金と生活水準が急速に上がっていった。

投資は、適切に行なわれなかった場合には、それ自体で効果をあげるものではない。折よくも、韓国は輸出主導による工業化という日本のモデルにしたがっていた。国民が貧しくて鉄鋼やテレビや自動車を買えないなら、どうすればこうした製品を生産できるだろうか? これらの製品に対する初期需要を見つけるため、韓国は輸出に向かわざるをえなかった。

さらに、他国と競争しなくてはならないため、品質レベルを上げなくてはならない。そのおかげで韓国は、多くの国が国家主導の工業振興政策のなかで抱えていた数々の「ホワイトエレファント(無用の長物)」産業を生まずにすんだのだった。