リストの仲間入りを望む声が増加
これまでの日本では、この「リスト」の内実に異議が申し立てられるようなことはあまりなかった。しかし近年ではそうした声があちこちから湧き上がり、大きな動きとなっている。
高齢者だけではなく現役世代も加えてほしい、女性ばかりでなく男性も含めるべきだ、日本人こそつらいのだから外国人は除いてもらいたい、という具合だ。また、低所得者よりも中所得者、障害者よりも健常者、失業者よりも労働者のほうがつらい、などという声もよく聞かれる。
中間層やマジョリティに属し、元来はむしろ「強者リスト」のメンバーであるはずの人たちが、こうしてそれぞれの「弱さ」を訴えながら、「弱者」の仲間入りをさせてもらいたいと望むようなケースが増えている。
これまでは守られる対象ではなかった人たちが、自分たちを守ってほしい、自分たちには守られる権利がある、などと主張するケースだ。その結果、元来の「明白な弱者」の枠には収まりきらない多様な弱者、「曖昧な弱者」が大量発生することになった。
こうした状況が生じたことの背景にあるのは、とくに日本の場合、「明白な弱者」への対応が偏ったやり方で進められてきたという事情だろう。「再分配の政治」のひずみ、そして「承認の政治」の遅れという事情がそこにはあった。まず前者の点、福祉国家の枠組みに関わる点から見ていこう。
バブル崩壊まで自画自賛されていた「日本型福祉」
元来、日本の福祉レジームは「日本型福祉社会」などと呼ばれ、福祉国家としての制度の外側のいくつかのシステムに支えられて成り立ってきたという経緯を持つ。
その一つは「企業福祉」のシステムだ。とくに都市部の大企業では、終身雇用と年功賃金を軸とするいわゆる日本型雇用慣行と、充実した福利厚生制度により、労働者とその家族の生活が高いレベルで守られてきた。その結果、失業者や低所得者が大量発生することが防がれてきた。
一方で地方部の農家や自営業者などは、自民党が主導する「開発主義」のもとで守られてきた。公共事業や補助金を農村部に振り向けたり、旧来型の産業に有利になるよう規制や税制を定めたりすることだ。その結果、都市部の所得が地方部に移転され、再分配が促進されることになった。
これらのシステムにより、都市部でも地方部でも「男性稼ぎ主」の雇用が守られたため、女性は専業主婦となり、育児や介護に専念することになる。第三号被保険者制度などにより、家族のケアを女性が担うという分業体制が確立され、「家族福祉」のシステムが実現されることになった。
これら3つのシステム、企業福祉、開発主義、家族福祉は、福祉国家としての支出の削減に大いに役立ってきた。本来であれば失業手当や中小企業支援、育児手当や介護手当など、国家として負担しなければならない部分をそれらが肩代わりしてくれたからだ。
とくに高度経済成長期からバブル経済の時期にかけては、3つのシステムがフル稼働していたため、「日本型福祉社会」は非常に効率のよいレジームだとして自画自賛されていた。

