とにかく大事なのはバットスピード

ダニエル・カタランは「打球速度が約158キロ以上、打球角度が26~30度の範囲(バレルゾーン)にある打球は、安打や本塁打になる確率が極めて高い」というフライボール革命の「基本理論」を紹介した上で、以下のように続けた。

「簡単に説明する。どうやったらボールを強く打てるかは、『バットスピード』、これにつきる。単純な話だ。物理の法則で、バットスピードが大事だ。筋肉量が足りなかったり、打席に対するアプローチがよくなくても、それは自分たちで克服できるから、大きな問題ではないが、バットスピードがないと何も始まらない。一流のバッターと三流バッターは何が違うかというとバットスピードだ」

大谷もドライブラインで同様のレクチャーを受けた。そして、バレルゾーン内に速度の速い打球を放つため、バットスピードの向上に専念したのだ。

MLBでは「ホークアイ」を基幹とする計測システムに基づき、「スタットキャスト」という動作解析システムを構築し、公開している。

「打率」「打点」は目標にしない

これによれば、大谷の2020年以降の、最高打球速度(速)、バレルゾーンに強い打球を打った比率(バレル率)、打球に占める打球速度95マイル(約153キロ)以上の割合(ハードヒット率)は、以下のように推移している(図表5)。括弧内の数字はMLB全体の順位。

【図表5】大谷の2020年以降の最高打球速度、バレル率、ハードヒット率
筆者作成

このデータの対象となる選手は、毎年250人以上いる。50位台でも上位と言えるが、大谷は2020年秋からドライブラインに通い、翌2021年から、フライボール革命に関する指標を急上昇させた。それとともに打撃成績も急上昇し、大打者になっていったのだ。

このデータはアーロン・ジャッジ(ヤンキース)、カイル・シュワバー(フィリーズ)などの強打者が上位の常連になっている。今季の大谷は、投手としてサイ・ヤング賞を目指していた。そちらに重点を置いたためか打球速度は25位まで低下。バレル率、ハードヒット率もやや低下している。

【図表6】村上のヤクルト時代の年度別打撃成績
筆者作成

村上は、2023年のWBC以降、これらの指標を目標にして打撃を磨いたと考えられる。すでにMLBを目指していたため、NPBでの「打率」「打点」などは目標にはしていなかったようだ。