イチローでさえも成績が下落

2001年にイチローがオリックスからマリナーズに移籍したのを皮切りに、多くの日本人打者がMLBに挑戦したが、ほとんど成功しなかった。ほぼすべての日本人打者が、MLBでは「小型化」した。NPBで中軸を打ち、タイトルを取るような強打者であっても、MLBに移籍すると並の打者になり、中軸ではなく下位を打つことが多かったのだ。

NPBから移籍した打者で最大の成功者は言うまでもなくイチローだ。MLBで33人しかいない3000本安打を記録し、2025年には99%の高い得票率で野球殿堂入りした。しかし、そのイチローをしても、打率、本塁打率(本塁打÷打数)、OPS(長打率+出塁率)などの数値は、NPB時代よりも下落しているのだ。

【図表1】イチローのNPB時代とMLB時代の打率、本塁打率、OPS
筆者作成

そこまで下がってもイチローはMLBでは傑出した成績をキープできたから殿堂入りしたが、それ以外の選手は、ほとんどが鼻っ柱をへし折られてNPBに戻ってきた。

きっかけは第5回WBC

こうした中でただ一人、NPB時代よりも成績を大幅に向上させた選手がいる。2018年から海を渡り、今や「MLB最高の選手」と評される大谷翔平(ドジャース)だ。彼はNPB時代よりも、打率を除く数字をはるかに向上させた。

【図表2】大谷のNPB時代とMLB時代の打率、本塁打率、OPS
筆者作成

それだけでなく、投手としても超一流の成績を残し、MVP4度に輝いている。しかし、それ以降にMLBに移籍した打者も、NPBよりは「小型化」するのが常だった。

【図表3】筒香、秋山、鈴木、吉田のNPB時代とMLB時代の打率、本塁打率、OPS
筆者作成

強打者の指標とされるOPS.800をMLBでクリアしているのは鈴木だけ。彼はMLBの野球に適応しつつあるが、他の打者は強打者とは言えなかった。

今年からMLBに挑戦した村上宗隆、岡本和真も当然、同じような経緯をたどるだろうと予測していたのだが、筆者の予想は外れつつある。

【図表4】村上のNPB時代とMLB時代の打率、本塁打率、OPS
筆者作成

なぜ、村上は「小型化の呪縛」を逃れることができたのか? 筆者はその最大の「鍵」は、2023年の第5回WBCにあったと見ている。

この大会で侍ジャパンは2大会ぶり、通算3度目の世界一に輝いた。ダルビッシュ有(パドレス)、大谷翔平、日系二世のラーズ・ヌートバー(カージナルス、現ダイヤモンドバックス)、吉田正尚(レッドソックス)と、メジャーリーガーが4人参加したが、とりわけ大谷翔平である。