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図表3 社における正社員の人事管理に関する認識

さらに、日本経済研究センターにおいて、私どものグループが行った大企業11社を対象にした調査(回答従業員数、正社員11318名)によれば、一流企業のなかでも、正社員として会社に守られている程度に関する認識には違いがあることが明らかになっている。図表3のデータによれば、確かに、雇用および賃金についての安定はある程度守られているようだが、中長期的なキャリアの見通しや会社からのキャリアに関するアドバイス、さらに、何かあったときの会社からのサポートなどについては、50%前後の回答者が、そうした支援を会社から得られるという認識をもっていないようである。また、評価や処遇に関する不満や苦情を表明したり、経営に直接物申す機会については、そうしたことができる認識をもっている回答者はさらに少ない。

この分布はある程度、会社ごとの違いも反映しているだろう。でも、これら11社の企業は、わが国の代表的な優良企業である。こうした企業でも、一定割合は、コア従業員として自らを認識していない可能性を示すのではないだろうか。日本企業では、これまでも雇用する従業員を、学歴や職種などによって呼び方の異なる複数の雇用区分にわけ、雇用区分ごとに、異なるキャリア管理や異なる処遇制度などを適用する仕組みが一般化していた。「限定正社員」という現象は、直近で議論されるようになるずっと前から、わが国の人事管理に存在していたのである。

ここから推測できる可能性は、正社員といっても、もはや一枚岩ではないということだろう。多様な位置づけにある正社員がいるのである。法律に基づいて、雇用期間については、一定の保障が与えられているが、その他の面については、多様性のある人材群が現在「正社員」と呼ばれるグループなのである。そして企業によっては、一部または全部の正社員を“周辺的”に扱う企業もある。同じように期限の定めのない雇用契約を結ぶ「正社員」のなかでも、その他の雇用条件において違いのある異なった人材層が増えてきていると考えられる。優良企業でも、正社員の区分管理を増やし、違いを明確にしている可能性がある。

正社員といっても、もう守られた存在ではないのである。

(平良 徹=図版作成)
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