制度上は対象でも、現実には「間に合わない」

40歳以上になると納める介護保険料。けれども、いざ介護が必要になったとき、誰もがすぐにサービスを使えるとは限らない。

とくに問題なのが、病状が急速に変化する終末期のがん患者である。介護保険は、65歳以上なら原因を問わず、40〜64歳なら末期がんなどの特定疾病で要介護・要支援状態になった場合に利用できる。

制度上は対象でも、必要な時期にサービスが間に合わないケースは少なくない。しかも、がん患者に必要な支援は「亡くなる直前」だけではない。抗がん剤治療中には、強い倦怠感、吐き気、食欲低下、痛み、しびれなどで、短期間に生活の質が大きく落ちることがある。昨日まで何とか自分でできていた排泄、入浴、食事、通院が、急に難しくなる。その時に介護保険が使えないと、患者は自宅で孤立し、家族も限界まで抱え込むことになる。

国立がん研究センターが2018〜2019年度に実施した遺族調査では、死亡前6カ月間に介護保険を一度も利用しなかった人が2万807人いた。そのうち4849人、23.3%は「申請したが利用できなかった」と回答し、さらにその約半数にあたる2413人は、要介護認定に必要な調査を受ける前に亡くなっていた。

認定のスピードが追いつかない

首都圏最大規模の在宅医療チームを率いる佐々木淳医師は、こう説明する。

「がんの患者さんは、老衰の方と違って、最後は体調変化が急激に起こります。比較的ぎりぎりまで歩けることもありますが、歩けなくなると平均1カ月ほどで一気に悪くなってしまう。歩けなくなった瞬間に介護サービスが始まらないと、家族も本人も大変です」

佐々木医師
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佐々木医師

現在の要介護認定は、市区町村への申請後、認定調査員が心身の状態を確認し、主治医意見書とあわせてコンピューターで一次判定する。その後、保健・医療・福祉の専門家による審査会が二次判定し、要支援1・2、要介護1〜5、または非該当が決まる。結果は原則30日以内だが、自治体や書類の状況により1カ月を超え、2〜3カ月かかることもある。

【問題点1】
「急変」と「治療中のQOL低下」に、認定のスピードが追いつかない

介護保険の認定は、もともと高齢者の介護を想定してつくられた仕組みである。身体機能や認知機能、日常生活にどれくらい介助が必要かなどを調べ、要支援1・2、要介護1〜5のいずれかに判定される。ところが、終末期のがん患者は、亡くなる直前まで歩けたり、トイレに行けたりすることもあり、認定時点では「まだ介護度が軽い」と判断されやすい。