マスコミ報道はあまりにズレている

もうひとつ、少子化を進める「結婚のインフレ」を皮肉にも喚起してしまう要因として「共働きの推奨」というものがあります。もちろん、「共働きして世帯年収をあげたほうがいい」というのは夫婦単位のミクロな視点では間違っていないでしょう。政府の少子化対策も、それらをサポートする意味で幼保サービス、学童の充実や育休推奨、果てはベビーシッター補助金まで検討しています。しかし、残念ながら、これもやればやるほどマクロの視点では「結婚したくてもできない」状況を発生させる結果になります。

2025年の国民生活基礎調査においても、「児童のいる世帯のうち、母親が働いている割合は81.2%に上り、過去最多」という文言が明記されています。一部のメディアは、「子育て中の女性の就労支援や男性の育休取得の促進で、男女ともに育児をしながら仕事を続ける機運の醸成」などと論じていますが、そんな悠長な話ではありません。

もちろん、中には、自身のキャリア継続を優先して、働きながら出産・子育てしたいという人がいることは否定しません。しかし、全員が必ずしもそう考えているわけではない。また、夫婦の事情によって、夫婦片働きにならざるを得ない場合もあるでしょう。母親が働いている割合81.2%という数字も、パートを含めてのものであり、必ずしも8割がフルタイム就業ではありませんし、夫婦の価値観が「共働き」に変わったからそうなったのではなく、「夫婦二馬力で稼がないとやっていけない」という意味あいが強いはずです。

共働きの増加と出生率に「負の相関」

にもかかわらず、「夫婦共働きがデフォルト」のように推奨されてしまうと、それを希望する以外の夫婦にとっては苦痛でしかない上に、それができない事情の夫婦にとっては「子どもを諦める」に加え、未婚男女が「そもそも結婚も諦める」という皮肉なバタフライエフェクトを誘引します。

事実、共働き夫婦の増加と出生率には負の相関すらみられます。逆に、「児童のいる世帯」の減少とは、片働き夫婦の減少と完全に一致します。むしろ「結婚・出産できる夫婦とそれ以外」との格差を広げています。

2016年と2025年とで、児童のいる世帯のうち妻が正規雇用、非正規雇用(パートなど)、無業(専業主婦)の場合で世帯年収別の増減を示したのが図表3のグラフです。

【図表3】妻の就業形態別 世帯年収別 児童のいる世帯数