そこには、カーキ色の制服を着て、どこか滑稽な赤い郵便配達員風の帽子をかぶった警備員が、ドアを押さえて待っていた。

エレベーターで上がる途中、ふと、最上階が26階であることに気づいた。コンラッドのフロントが28階ということは、27階はどうした? まさか村上春樹風のパラレルワールドとか? フミコさんに訊いてみた。彼女は半ば笑ったような顔で私を見た。“ガイジン”の理解しがたい言動に出くわした日本人におなじみの表情だ。

「さあ、どうしてなんでしょう」と彼女は軽快な声で言った。