「両方のグループが、実は同意できること」を探した

「この人とあの人は、だいたい同じ意見に賛成している」というように分けます。すると、「賛成派グループ」「反対派グループ」のような塊が見えてきます。

ここで面白いのは、AIの使い方です。

AIは、「賛成派と反対派がどう対立しているか」を分析しただけではありません。

「両方のグループが、実は同意できること」を探したのです。

普通、対立しているふたつのグループを見ると、「意見が違うところ」ばかりが目につきます。でも、よく調べてみると、「意見が同じところ」もあるはずです。

これを「コモングラウンド」(共通の土台)と呼びます。

AIが約1700人の意見を分析した結果、意外な共通点が見つかりました。

Uber反対派の人たちも、実は「Uberそのものが嫌い」というわけではありませんでした。反対派が心配していたのは、「知らない人の車に乗るのは不安」ということでした。タクシーならば、ちゃんとした会社が運営していて、運転手の身元もわかっている。

でもUberだと、どんな人が運転しているかわかりません。

AIは「パターンを見つけ出す」のは得意

一方、Uber賛成派の人たちも、「安全はどうでもいい」と思っていたわけではありませんでした。便利で安いサービスがほしい。でも、安全であることも大切だと思っていました。つまり、両方のグループとも「安全なサービスがほしい」という点では一致していたのです。

人間が約1700人もの意見を一人ひとり読んで、この「隠れた共通点」を見つけ出すのは簡単ではありません。対立している意見を見ると、どうしても「違うところ」に目が行ってしまいます。

ところが、AIは違います。

膨大なデータの中からパターンを見つけ出すのは得意です。しかも、感情に左右されません。「この人の意見は嫌いだから無視しよう」ということがありません。

オードリー・タン デジタル発展相
写真=京都新聞社/共同通信イメージズ
質問に答える唐鳳(オードリー・タン)デジタル発展相(=2024年3月7日、台湾・台北市)

このとき、いいアイデアとして浮かび上がったのが、「ドライバー評価システムを導入する」というものでした。

これはAIが考え出したものではありません。参加者の中から出てきた意見です。

AIの役割は、膨大な意見の中から「実は両方のグループが同意できるもの」を見つけ出し、それを目に見える形にしたことでした。

Uberの運転手さえも含め、全員が「評価システムがあれば安心だ」という点で一致していることを、AIが可視化してくれたのです。Uberのドライバーを評価するシステムをつくって、乗客が「この人は安全だった」「この人はちょっと怖かった」と評価できるようにするのです。

評価の低いドライバーは利用を敬遠されて、自然と排除されます。そうすれば、タクシーと同じように、安心して乗れるようになります。