「円安×供給不足」で想定を超える数字

5月の企業物価指数は、一部の経済専門家にも驚きを与えた。発表された数字が、事前予想(前年同月比で約5.6%上昇)を大きく上回ったからだ。2024年以降の実績と予想の乖離の中でも、今回の上振れ幅は大きかった。その背景には、想定された以上にインフレ圧力は強烈ということだ。

特に、海外から輸入するモノの指数=輸入物価の上昇ペースは急激だった。5月は前年同月比で25.5%(円ベース)上昇した。外国為替市場では、円が主要な通貨に対して下落した。個人も機関投資家も、有価証券や直接投資で海外への投資を増やし、円の減価圧力は高まった。

さらに、イラン戦争で石油、液化天然ガス、アルミ、肥料、そして日用品から建設資材まで幅広い化学製品に不可欠なナフサの供給が減少した。供給が減少すると、基本的には価格は上昇する。石油・石炭・天然ガスなどの輸入価格は上昇した。円安との掛け算で輸入物価は上昇し、企業物価を押し上げた。

世界を翻弄したアメリカvs.イラン

エネルギー、基礎資材の投入コスト増加は、広い範囲の産業に波及する。電力・都市ガス・水道、ポリエチレンなどの化学製品、アルミニウムなどの非鉄金属、プラスチック製品、鉄鋼関連と幅広い業種で企業物価は上昇した。

企業のコスト上昇、それによるインフレ圧力の高まりは、わが国だけではない。世界的な問題だ。特に、中東地域からの石油、天然ガス調達依存度が高いアジア地域では、インフレ懸念が急速に高まった。インドネシアなどは通貨防衛のための利上げを余儀なくされている。

しかも、6月11日、イランはホルムズ海峡を完全封鎖したと発表した。エネルギー資源やガソリン価格の上昇に加え、中東海域でのタンカー航行のリスク、保険料に追加的な押し上げ圧力がかかるリスクは高いと考えられる。

ホルムズ海峡を航行するコンテナ船
写真=iStock.com/Suphanat Khumsap
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その後、アメリカとイランが戦闘終結に合意したことで緊張状態は緩和されたが、世界全体で、企業の調達、製造、サービスなどのコストプッシュ圧力は高まっていると考えられる。