ベッセントが片山さつきを「叱責」

海外から見れば、日本は経済、安全保障、エネルギー、世論のすべてで揺れている国に見え始めている。

そこに追い打ちをかけるのが、金融政策に対するアメリカの圧力だ。

それを象徴するのが、ベッセント米財務長官の存在である。

ベッセントは1990年代にジョージ・ソロス氏のヘッジファンドで働いており、日本にもしばしば来日していた。さらに第二次安倍政権が発足し、日銀の大規模金融緩和がスタートした後のいわゆる「アベノミクス相場」では、円安に賭けて大きな利益を上げたとも言われる「知日派」だ。

そんなベッセントだけに、日本に優しくしてくれるかというと大間違いだ。むしろ日本の事情をよく知っているだけに、強い姿勢で要求を突き付けてくる。

今年初め、日本国債市場の混乱が、米国債市場にも波及した際、ベッセント長官はダボスで、片山財務相に強い調子で対応を迫ったと報じられている。ブルームバーグによれば、日本側はそれを「叱責」に近いものと受け止めたという。

こちらに向かって人差し指を突き出しているビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
ベッセントが片山さつきを叱責(※写真はイメージです)

日本は要求を断れない

ベッセントが求めているのは、円安の是正だ。ただ、政府・日銀による為替介入ではなく、日銀の利上げによって日米金利差を縮小し、自然に円高になるような金融政策を求めていると考えられる。

いわゆる「為替介入」は、政府・日銀が保有するドルを売却し、円を買うことで実施される。ただ、そのドルの大半は米国債で運用されているため、大規模な為替介入を行う場合、米国債を売却する必要がある。

日本政府は米国債保有額が世界一だが、その日本が米国債を大量に売却すると、米国債の金利が上昇してしまう。金利が上昇すると、米国政府の利払い負担が増え、財政を圧迫するほか、貸出金利上昇を通じて景気を悪化させる、株価の下落要因になるなど、経済全体に影響が及ぶ。

そのため、ベッセントは日本に「軽々しく米国債を売るな、日本の金利を上げて対応しろ」と迫っているわけだ。

ベッセント長官は先日、トランプ大統領の訪中直前に日本に立ち寄り、片山大臣と会談した。ロイターによれば、その際彼は「過度な為替変動は望ましくない」と述べている。

一見、為替介入に一定の理解を示したようにも見えるが、ベッセントの考え方は変わっていない。一方で、「植田総裁が日本の金融政策を成功に導くと確信している」と、日銀・植田総裁に対して暗に利上げを迫っているとも取れる発言もしているからだ。

ただ、ベッセントの考え方は高市政権の考えとは真逆だ。高市政権は積極財政と金融緩和のダブルで景気回復をはかる「高圧経済」を掲げており、できるだけ利上げはしたくない。利上げによって利払い費が増えると、財政の拡大余地もなくなってしまうからだ。

しかしながら、もはや円安をこれ以上放置できなくなっているのも事実。円安を食い止めるには米国の協力と理解が不可欠であり、高市政権は「知日派」ベッセントとの関係にすがるしかない。その分、ある面ではベッセントの「言いなり」になるしかない部分も出てくるだろう。

事実、ブルームバーグは専門家の言葉として、「もし彼(ベッセント)が要求を強めれば、日本が押し返せる余地はほとんどないかもしれない」と伝えている。