中学受験をする場合、進学塾に通わせるのが一般的だ。受験準備の費用のうち一番かかる「塾代」を、大手塾を中心に紹介する。

私立中学の入学試験は、小学校6年生の1月、2月に行われる。“12歳の春”を目指して、小3の終わりの2月に始まる「小4クラス」から3年間通う家庭が多い。

総額では、いくら用意しておけばいいのだろうか。塾の費用は、授業料、教材費、定例テスト代、模試、対策講座、季節講習など煩雑でわかりにくい。中学受験カウンセラーの石田達人氏は、各塾の資料をもとに、取材や推定も加えて、“基本授業に加え塾の勧める選択講習を受講した標準的な例”として、塾費用を算出している。

「日能研を例に取ると、3年間で約215万円になります。内訳は、小4約45万円、小5約65万円。6年生になると一気に上がって約105万円となります。中学校に支払う受験費用、その他諸費用を加えると230万円と考えておいてください。学年が上がるにつれ金額が上がるのは、通塾日数も増え授業料自体もやや高くはなりますが、一番の違いはオプション講座です。受験直前の6年生は志望校対策などの選択講座や夏や冬の季節講習などのオプション部分が多くなり、その分、高額になるのです」(石田氏)

その傾向は、他の大手塾もだいたい同様だという。では、塾によってどれくらい違いがあるのだろうか。小6の年間費用で比較してみよう。石田氏の調査によると「SAPIX、早稲田アカデミーが約120万円とやや高く、日能研、四谷大塚が約105万円と平均的、栄光ゼミナールが約95万円、市進学院が約90万円とやや安め。受講内容にもよるが、おおよそ30万円の差があります」という。

森上教育研究所代表で、中学受験アドバイザーとしても知られる森上展安氏は、各塾の顧客戦略の差だと説明する。

「例えば、御三家(男子校の開成・麻布・武蔵、女子校の桜蔭・女子学院・雙葉)など超難関校に強いといわれるSAPIXは、小4コースからヘビーなカリキュラムになっています。教材の量が多く、授業時間も長い。早稲田アカデミーは小4、小5の授業料はむしろ安めですが、小6コースのオプションが豊富。4泊5日で8万2000円の夏期合宿もほぼ全員が参加します。必然的に費用は高くなりますが、合格実績を見て、それだけの価値があると親御さんは考えているのでしょう」