ロシア当局「中国車排除」の実態
デニス氏は、上昇傾向にある現在の価格は不当だと思う、と率直に認める。
「けれど、状況は悪くなる一方だと分かっているし、これが生涯最後の新車になるかもしれないと思い、まだ買えるうちに決断した」
大手ディーラーの営業マネージャー、セルゲイ氏も、「価格が下がることは二度とないと誰もが分かっている」と口をそろえる。
関税策以外にも、中国車の排除は続く。
昨年7月、ロススタンダルト(ロシア連邦技術規制・度量衡局)が、トラック4ブランドの認証を取り消し、販売を禁じた。対象となったのは、東風、福田、一汽、シトラック。いずれも中国勢で、シトラックのみ中国・ドイツの合弁だ。当局は、ブレーキ性能と騒音レベルが基準を満たしていないことを名目上の理由とした。
だが、ポーランドのシンクタンクの東方研究センター(OSW)は異なる見立てを示す。真の狙いは、国営企業「ロステク」の利益を保護することにある、と。ロステクはトラック大手カマズと、乗用車「ラーダ」を生産するアフトワズを傘下に擁する。
品質や安全を盾に外国製品を締め出すのは、ロシアの常套手段だ。ジョージア産やモルドバ産のワインもかつて、同じ論法で市場から追われた。
大混乱を招いたタクシー国産化令
盟友である中国を市場から排除するほど追い詰められたロシアだが、施策により国内には逆風が吹き荒れる。
車両価格の高騰とロシア政府の施策により、破壊的な影響を受けている業種の一つが、タクシー業界だ。
今年3月、タクシー車両を国産車とすることを義務づける「ローカライゼーション規制」が施行された。
だがロシアの全国紙のイズベスチヤによると、施行時点でこの要件を満たす車両は市場全体のわずか7%にすぎない。地域によってはさらに深刻で、沿海地方(州都ウラジオストク、ロシア極東南端)では適合車両がわずか0.3%にとどまり、事実上ゼロに等しい。
原因は明らかに価格の壁だ。地方でタクシーの採算が取れる車両価格の上限は、おおむね150万ルーブル(約314万円)とされる。
ところが、国産化要件を満たすモデルのかなりの割合が、250万〜400万ルーブル(約523万〜836万円)以上の価格帯に集中する。比較的手頃とされるロシア国産乗用車のラーダ・ヴェスタでさえ200万ルーブル(約418万円)に迫り、規制に従おうにも手の届く車両がない。
プーチン大統領がこの法律に署名したのは、昨年5月のことだ。モスクワ・タイムズによれば、政府系の分析センターは、50万人を超えるドライバーが業界を離脱する見込みだと警告している。

