新車を買いたくても買えないワケ
だが、こうして中国車が席巻した市場で、ロシアの消費者はいま、急速に新車購入の意欲を失いつつある。
原因は価格の高騰だ。新車の平均価格は2021年の199万ルーブル[約416万円(5月6日現在のレート、1ルーブル2.09円で換算、以下同)]から2023年には296万ルーブル(約619万円)へ、約5割も高くなった。
ロシア独立系英字紙のモスクワ・タイムズが昨年11月に伝えたところでは、2025年上半期にロシアで売れた新車は前年比26%減の約53万台に落ち込んでいる。
高金利や融資条件の厳格化も重なり、多くの消費者が自動車ローンの利用を躊躇するようになった。ロシアの全国信用履歴局(NBKI)によると、昨年1〜9月期の実行額(金融機関が実際に貸し付けた合計額)にして、前年同期比45.5%減と大きく沈んだ。
保有車両の平均車齢は15.5年で、日本の約9年を大きく上回る。路上を走る車の7割が車齢10年超だ。新車には手の届かない消費者が、ロシアで静かに増えている。
「ラストチャンス」にロシア人が殺到
価格の急騰傾向を受け、比較的資金に余裕のある消費者たちは、駆け込みでの購入を急ぐ。
グローバル金融情報サイトのインベスティングドットコムが報じたロシアの調査機関オートスタットのデータによると、昨年10月の新車販売台数は前月比35%増の16万5702台に急増した。ただしこれは新車購入意欲が上向いたわけではなく、通称スクラップ税の引き上げを見越した駆け込みだったという。
前年同月比では、依然3.2%減。市場の回復にはほど遠い。それでいて新車の平均価格は343万ルーブル(約717万円)と過去最高を更新した。これ以上の値上がりを恐れた人々が「新車購入の最後のチャンス」とばかりに殺到した結果だ。
同サイトが取材したデニス氏は、実際に駆け込みで購入した消費者の一人だ。手に入れたのは、西側ブランドの撤退後も並行輸入で流通するインフィニティQX50。日産の高級ブランドが北米を中心に展開するコンパクトSUVだ。
デニス氏はもともと、翌年に買うつもりだった。「スクラップ税こそが今決断した理由だ」と駆け込みの理由を語る。実際、担当ディーラーからは、「購入を先延ばしにしていたら、実際に支払った650万ルーブル(約1360万円)ではなく720万ルーブル(約1500万円)かかっていた」と打ち明けられたという。判断をわずかでも遅らせれば、全く同じモデルでも70万ルーブル(約146万円)の負担増になっていた。

