同じムスリムでも、どの程度ハラルを気にするかは地域や個人差によるが、ハラルマークがない商品は絶対に手に取らないという敬虔な人も多い。ゆえにイスラム圏を目指す企業にとってハラル認証の取得は、まさに同商圏への“通行手形”であり、市場を拡大するための第一歩だといえる。
そんなハラル認証を受け、事業拡大に取り組む日本企業はここ1、2年で急激に増えている。味の素は2012年にインドネシアに工場を建設、旨味調味料「ほんだし」に相当する「Masako」を製造する。キユーピーも10年、マレーシアに工場を設立、ハラル対応のマヨネーズを製造、販売拡充に動き出している。
そうした勢いを裏づけるように12年10月に東京・池袋に事務所を構えたばかりのハラル・ジャパン協会代表理事、佐久間朋宏氏によると、多いときにはメールや電話で1日15~20件もの問い合わせが入るという。佐久間氏によると「日本全国の大小さまざまな企業がハラル認証に向けて動き出している。特に食品、化粧品やホテル業界、商業施設、レジャー施設などからの関心が高い」という。
「まだ、動き始めたばかり」(佐久間氏)といわれるハラル・ビジネスの最前線を追いかけてみた。
ビールジョッキはパッケージにNG!
「今年初めにタイでハラル認証を取得しました。もちろん、マレーシア、インドネシアへの輸出拡大を念頭に置いての戦略ですよ」
こう切り出すのは江崎グリコ海外事業推進部長、堀田暁氏だ。
同社は1970年にタイに進出、看板商品である「ポッキー」や「プリッツ」をはじめとした菓子の現地製造・販売を行ってきた。従来よりタイで製造した商品をイスラム教徒が多いインドネシアやマレーシアで販売してきたが、販売拡大のために、ハラル認証が必要不可欠なものだと判断した。
「マークがなくても販売はできるのですが、最近、商談の際にハラル認証のことを聞かれることが頻繁になってきたので、ついに取得に向けて動き出したのです」と堀田氏は語る。