立ちはだかる老朽化の壁

その後、メローニ首相らは原発の再稼働に向けた動きを徐々に進めていたが、今年2月にイラン発のエネルギーショックが生じたことで、この動きに弾みがついた。3月にはイタリアの当局者がカナダを訪問し、フランスの当局者と原発に関する協議を重ねたと報じられている。原発の利用に際して、フランス側に協力を要請したようだ。

2026年4月25日、ローマ中心部で行われたイタリア解放記念日の献花式に出席したイタリアのジョルジャ・メローニ首相(中央)
写真=AFP/時事通信フォト
2026年4月25日、ローマ中心部で行われたイタリア解放記念日の献花式に出席したイタリアのジョルジャ・メローニ首相(中央)

また4月22日には、ジャンカルロ・ジョルジェッティ財務相が記者団に対して、外生的なエネルギーショックに伴う悪影響を和らげるためには、原発の再稼働が重要な選択肢となると述べている。イタリアは再エネのみならず天然ガスへの依存度が高いため、今般のエネルギーショックの悪影響を強く受けたことが発言の背景にあるらしい。

ただし、イタリアでは、原発の稼働が止まってすでに40年近い歳月が経過している。設備は相応に老朽化しているため、それを再稼働するにしても細心の注意を要する。それに、40年近くも稼働を停止していれば、原発を稼働するためのノウハウも失われている。国内に技術者がいないのだから、イタリアは国外の人材に頼らざるを得ない。

設備が老朽化しているのだから、新型の原発を設置した方がいいとも言える。イタリアの場合、フランスが推す大型のEPR2(改良型欧州加圧水型炉)というよりも、世界的に期待が高まるSMR(小型モジュール炉)やAMR(新型モジュール炉)の導入を優先する方針のようだ。とはいえ、SMRやAMRは実用化にはまだまだ至らない。

そもそも、原発を新設すること自体が10年がかりのプロジェクトだ。それに欧州のみならず、世界中で原発に対するニーズは高まっており、原発に要するヒト・モノ・カネは逼迫している。これは各国に共通した悩みといえよう。そうなると、無理を承知で、40年使くも不稼働のままである原発の再稼働にトライせざるを得なくなる。

依然として不足するグリッド

では、肝心のイタリア国民はどう考えているのか。少し古いデータとなるが、イタリアの調査会社SWGが2024年11月に発表した原発に対する国民の関心を尋ねた世論調査が参考になる。これによると、回答者の48%が原発の新設に賛成している一方、反対しているのは24%だった。浮動票もあるが、世論は概ね原発に好意的のようだ。

ただし、これはあくまで新設であり、再稼働を尋ねたわけではない。再稼働となると、施設が老朽化しているため、やはりハードルが高くなる。同時に、回答者の80%以上が、電力価格の高騰に対する不満を述べている。電力価格が低下するなら、新型の原発であれば容認できるというのがイタリア国民の概ね半数の意見というところだろう。

原発に対する態度には地域差もある。要するに、北部の産業地帯ほど原発に対する態度が寛容であるが、南部の農業地帯ほど態度が不寛容になる。同時に、これは南北を貫く送電網(グリッド)が存在しないという、構造的な問題を浮き彫りにするものでもある。南部の農村地帯では、太陽光や風力を中心とする再エネ発電が普及している。