完成が最も遅く、衰えが最も早い部位

たとえば視覚処理などを担う後頭葉は3~6歳でほぼ完成しますが、記憶や言語を担う側頭葉は10代を過ぎるまで成熟しません。前頭葉が完成するのは、さらにその後のこと。個人差はありますが、おおむね20代半ばまでかかると考えられています。

つまり前頭葉は、もっとも発達が遅く、それなのに老化はいちばん早いのです。発達の遅い人は30代前半でやっと完成するのに、衰えの早い人は40代から萎縮が始まります。活躍できる期間がほかの部位より短いという意味で、ややはかない存在といえるかもしれません。だからこそ、大事にしなければいけないのです。

前頭葉は人間が人間らしく生きていく上で、とても重要な機能を持っています。その萎縮を防ぐことができれば、単にキレやすくなるのを食い止められるだけではありません。

旺盛な意欲を持って前向きに暮らし、環境の変化に適応しながらクリエイティブな活動を続けるのは、誰にとっても望ましい生き方、人間らしい生き方でしょう。脳の萎縮は避けられない宿命とはいえ、前頭葉の活躍期間が長くなればなるほど、人間としての生きがいも豊かになるはずです。

前頭葉の老化を防ぐ「唯一の方法」

では、どうすれば前頭葉の老化を防ぎ、萎縮を遅らせることができるのでしょうか。まず肝に銘じてほしいのは、前頭葉にかぎったことではなく、「脳は使わないと衰える」ということです。

定年退職した夫が、変わらず専業主婦を続けている妻ほど旅行に積極的になれないのは、仕事で使っていた前頭葉を使わなくなって老化が進み、新しい物事への意欲を失ってしまうからです。そしてそれは運動不足とも直結するのですから、心身ともに老化が進んでいくことにほかなりません。

ですから心身ともに老化を遅らせるためには、前頭葉をしっかりと使い続けるべきでしょう。

ただし前頭葉は「楽をしたがる脳」でもあります。私たちの脳内ではさまざまな部位が連携して情報を処理しており、何でもかんでも前頭葉を使って考えるわけではありません。たとえば記憶や言語情報は側頭葉、計算問題の処理には頭頂葉が使われますから、前頭葉を使わなくても、かなりの情報処理ができるのです。