カロリーベース自給率の問題点

日本では主にカロリーベース自給率が注目されていますが、野菜や果物、魚などは、生産額が高くてもカロリーは低いため、この指標では過小評価されやすいという欠点があります。つまり、カロリーベース自給率の最大の問題は、「カロリーさえ満たせばよい」という発想に陥りやすい点です。

仮に日本がカロリーベース自給率100%を目指すとしましょう。現在の日本の農地面積や生産構造を前提にすると、最も効率よくカロリーを摂取できる作物――コメや小麦、イモ類などに偏る可能性が高くなります。極端な例を挙げれば、1日の食事が、以下のように炭水化物中心の極めて単調なものになる可能性があるのです。

朝:白米と味噌汁
昼:おにぎり
夜:芋とご飯

なお、日本が畜産に必要な飼料の多くを輸入に頼っていることを考慮して計算すると、肉や卵、乳製品の摂取量を大幅に減らさなければ、カロリーベースでの自給率100%達成は不可能です。このように「自給率100%」という言葉の裏側で、栄養バランスや食の豊かさが犠牲になるリスクがあります。

サツマイモ
写真=iStock.com/piyaset
※写真はイメージです

平時偏重の指標であるという問題

もう一つの問題は、カロリーベース自給率は、あくまで平時の日本における生産および消費の構造に基づいて計算されている点です。

実際、有事においては、生産も消費も大きく変化します。もしも戦争や大規模な災害が起こって輸入がストップした場合、多くの人々は嗜好性の高い食材ではなく、より保存性が高くカロリーの高い食品を摂るようになるはずです。少なくとも、平時とは食生活が変わることは間違いありません。例えば、コメや小麦製品、芋類がメインとなり、タンパク質は豆類から、野菜は漬物が多くなると考えられます。

それに応じて、農業も作付け品目を変える必要が出てきます。戦時中に芋類が積極的に栽培されたのと同じ理由で、肥料があまり必要なく保存性の高いサツマイモやジャガイモを中心とした生産に変わっていくかもしれません。

つまり、本当に重要なのは「今の食生活をそのまま維持できるか」ではなく、「非常時にどれだけ柔軟に生産と消費を切り替えられるか」なのです。