わかめ、牛乳…食生活に関する錯覚

こうした歴史の中でつくられた常識のせいで、私たちは、食生活に関する錯覚を植えつけられてしまったんです。その錯覚を取り去らなければ、食生活の本を読めば読むほど、人の話を聞けば聞くほどわからなくなってしまいます。

その1つが、「肉を食べて筋肉もりもり」という錯覚です。たとえ

書影
帯津良一、幕内秀夫『なぜ粗食が体にいいのか』(三笠書房)

ば、私の患者さんの中にユニークな人がいました。

言いにくいことなんですが、その人は、髪が薄くて困っていたらしいんですが、一生懸命何かを食べていたわけです。何だかわかりますね。わかめなどの海藻類を懸命に食べていたわけです。

海藻を食べることはいいことだと思います。ただ、そこには大きな錯覚がありますね。私は笑いをこらえるのに必死でしたね。

もしその人が考えるように、海藻を食べると海藻のように髪が生えるなら、もずくを食べるともずくのような髪の毛が生えてくるんですかね。そうすると、とろろ昆布を食べたらストレートヘア、ひじきを食べたら五分刈りかなと、その人を見ながら想像してしまったんですよ。

でも、この人のような短絡的な錯覚は結構多いんです。たとえば、今でも保健所では、赤ちゃんのためのお母さんの授乳教室で、「おっぱいをよく出すためには牛乳を飲んでください」と平気で言っているところがあります。

これも笑い話ですよ。牛乳を飲んで、それがそのまま胸から出てきたら、母乳ではなくて牛乳ですよ。飲んだ牛乳が、そのまま胸に回って出てくるわけではありませんよね。ところが、いつの間にか、そういう言葉が普通になってしまうんです。

セメントをなめても骨は丈夫にならない

私たちは食べ物を消化するわけです。消化するというのは、まさに消して化けるということです。たとえば、ご飯には、おっぱいをつくる成分があるわけですよ。

体の中でさまざまな食べ物を消化し、おっぱいをつくるのであって、牛乳を飲めばそのまま出てくるわけではないんです。それなのに、そういう錯覚がじつに多いんですね。

骨粗鬆症と牛乳についても、同じように錯覚しているんです。牛乳にはカルシウムが多い。骨にもカルシウムが多い。だから、牛乳を飲めば骨が丈夫になる。これも錯覚なんです。

そんなにカルシウムをとりたかったら、セメントをなめればいいんです。大量にカルシウムがありますからね。それで骨が丈夫になるというのと同じだということです。あるいは、「貧血の人はレバーを食べろ」というのも同様の錯覚です。

たしかにレバーは赤いですよ。でも、レバーを食べても輸血しているわけではありませんからね。レバーを食べても、それが血管の中に入っていくわけではありません。

私たちは、ご飯や野菜なども食べて、それを消化し血をつくっているのであって、血を飲んで血をつくるのではありません。食べ物からおっぱいも血もつくっているんです。

だから、昔のある年齢以上の人は、おっぱいを出すには牛乳を飲めだなんて、そんな駄洒落のようなことは言いませんでした。その代わり、伝統的に全国的には3つの食品、食材を共通して勧めていたものです。

一番多いのは餅ですね。二番は魚のコイです。そして、三番目が味噌汁です。これらの食品を母乳の出ない人に勧める例が、全国的に多かったんです。この3つの食品がいいというのは、経験的に出てきたんでしょうね。

もし、レバーを食べて貧血が治るのなら、レバーより血を飲んだほうが手っ取り早くていいですよ。でも、私たちの体というのは、そんなふうにできていません。いろいろな食品から体に必要なものをつくり上げているんです。

そうでなければ、私たちの胃袋や腸はこんな複雑な構造をしていないと思います。便秘するほど複雑な構造をしているというのは、化けるという作業をやっているからなんです。

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