軍資金・兵力ゼロでつくった“包囲網”

しかも相手は武田信玄であり、上杉謙信であり、毛利輝元だ。少しでも失礼があれば無視されるどころか、かえって反感を買いかねない相手ばかりである。それを将軍のブランドを最大限に活かしながら、官位をちらつかせ、義理と礼儀でくるみ、気がついたら「動かざるを得ない空気」を作り上げてしまう。

しかも、義昭がすごいのは手紙だけで、実態がないことである。軍資金ゼロ、兵力ゼロ、拠点は毛利に間借り……その状況で包囲網を編み上げたのだ。

これは現代でいえば、レンタルスペースで撮影した「豪邸風」写真をSNSに上げ、レンタカーのフェラーリの前でポーズを決め、「私はこんな生活をしています」とフォロワーを集めるインフルエンサーと、構造としてはまったく同じだ。実態はないが、見せ方だけで人を動かしているわけだ。