放っておけない、愛嬌ある“ジジイ”
端的に言うと、元気な高齢者の世界は、「基本的に女性の世界」なのだ。
「どこに行ってもそう。大学に入り直す人などは、女性のほうが圧倒的に多い。そんな中で、威張らずに雑巾がけから始める男は受けがいい。俳句の会などで、女性に『教えてください』と頭を下げるのもいいでしょう」(山田氏)
では、女性の世界における人付き合いとは、男性のそれとどう違うのか。
男性の人付き合いの基準が上下関係なら、女性は好き嫌い。上下関係が希薄でフラットである。仕事ができる人より一生懸命な人が好かれ、威張る人、自慢話をする人は嫌われる。男性社会でもそこは似ているのだが、力関係が優先するから、相手が威張ったり自慢話をしても、片方が我慢するので表向き波風は立たない。
しかし、「上」の立場に慣れ、「下」の我慢を忘れたままフラットな女世界に入ると、周囲は我慢する必要のない人ばかり。反撃を食らうか、見放される。これは、外部のコミュニティでも家庭でも何ら変わらない。
「現役時代とは、何もかもがまったく逆になります」と言うのは天野氏だ。
「男社会の常識は、家庭内では通用しません。夫婦の間に正しいも間違いもない。正しいことは正しくなく、間違っていることが間違っていない。うまくやっていくためには、それを受け容れなければいけません」(天野氏)
意外にここをスマートにこなしているのが、70歳以上と60歳以下とか。
「『団塊の世代』を含む63歳から67~68歳が最も難しい」(天野氏)
実際に、老人介護施設で働く方々に、周囲と適応して好かれる老人と、孤立し嫌われる老人について聞いてみた。
「仕事柄、接するのはデイサービスにいらしているお客様。自立できなくなったり、社会的な交流がなくなって孤立された方が元々多いのですが……」
主に在宅介護を行う医療法人ブレイングループ(岐阜県)でデイサービスの責任者を務める堀智美氏が言う。
「好かれるのは、愛嬌のある方ですね。うわべの愛想ではない、放っておけない感じ。スタッフや他のお客様が近づきやすく、話も弾みます」(堀氏)