最も疲労回復効果のある食品成分
2003年に、産官学共同で16億円の予算を使って行なった「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」で、私は統括責任者をさせていただきました。
このプロジェクトの目的は、疲労を「見える化」すること、そして本当に疲労回復効果のある食品成分を見つけるということでした。
大塚製薬、大正製薬、コカ・コ―ラ、伊藤園、明治乳業といった、日本を代表する製薬会社・食品会社18社の協力を得て、各社の商品で使われている成分を、ひとつずつ挙げていただき、実際に抗疲労効果があるかどうかを検証したものです。
最終的に23種類の「抗疲労成分候補」が挙がり、それぞれにプラセボ(偽薬)対照二重盲検試験(被験者も実施にあたる医師も、薬の中身が試験薬か偽薬か知らない状態で厳正に行なう臨床試験)を行ないました。
その結果、23種類もの候補のうちの19種類は、「疲労」をとることも「疲労感」をとることもなく、まったく何ひとつ効果は検出できませんでした。
また、1種類は、「疲労」は一時的にとっても「疲労感」をとる効果はないものでした。そして、「疲労」および「疲労感」両方に抗疲労効果があると認められたのが「イミダペプチド」「クエン酸」「コエンザイムQ10」のわずか3つの成分でした。
そのなかでも、最も効果があるとわかったのが、タンパク質の一種である「イミダペプチド」だったのです。
渡り鳥の「驚異の持久力」の秘密
突然ですが、渡り鳥がなぜ、北はアラスカから南のニュージーランドまで、1万1000キロもの距離を休みなく飛び続けることができるのかご存じでしょうか。
渡り鳥は体重もあり、風に乗るといいながらも、実際は逆風も吹くなか、長距離を休みなく飛び続けます。これは、そう簡単なことではありません。羽も大きいですからかなりのパワーが必要です。
そこで、なぜ渡り鳥にはこんなことができるのかという研究がなされた結果、渡り鳥の羽の付け根にあたるむね肉に、イミダペプチドが豊富に含まれていることが判明しました。
イミダペプチドの合成酵素(DNAの鎖を修復する物質)は、鳥の場合は羽の付け根のむね肉、魚の場合は尾びれに近い赤みのところに豊富にあり、その動物にとって最も消耗の激しい部位に豊富に存在することがわかっています。
豚であれば、体重を支える部分、ちょうどもも肉やロース肉にあたる部分に、合成酵素が多くあります。
いい換えれば、各動物は進化の過程で、それぞれの動物にとって“最も消耗の激しい部位”にイミダペプチドの合成酵素を増やしてきたともいえます。
つまり、それらの各動物の「最も疲れやすいところ」の部位で、イミダペプチドをつねにつくり続け、そして、つくっては抗酸化力を発揮し、つくっては抗酸化力を発揮しということを、繰り返しているのです。
このように極めて効率的なしくみを、生物が生まれながらにして備えていることは、非常に神秘的で、驚嘆させられますね。
これが、ほかの抗酸化物質が数時間のうちに作用を終えてしまうのとは対照的に、イミダペプチドは1回の摂取で長時間、活性酸素による錆びを防いでくれる理由であり、抗疲労効果が高いゆえんと考えられています。
それでは人間の場合には、イミダペプチドの合成酵素はどこに多いと思いますか? そう、答えは「脳」です。
私たち人間の脳の自律神経の中枢、まさに疲労の中枢の箇所に、イミダペプチド合成酵素が豊富にあるのです。

