“やまなみロス”になる保護者たち
保護者の平均年齢は、一般的な保育園と同じ30代半ば~40代前半といったところで、多くが仕事を持っていた。つまり20歳前後で初産をして4人、5人と子どもを作っているわけではなく、20代後半~30代前半に結婚してからそれだけの数の子どもを産み育てているのだ。35歳以上が高齢出産であるのを踏まえれば、決して簡単なことではない。
道枝は、保護者が子だくさんになる理由についてこう話していた。
「昔からうちの園の親御さんは『また作っちゃいました』って嬉しそうに言いながら、予定以上に子どもを産んでいましたねぇ。“できちゃった”じゃなく、“作っちゃった”なんです。いつの間にかどんどん増えていくんですよ。
親御さんの中には、この園と少しでも長くかかわっていたいから、予定以上に子どもを作ることにしたっていう人もたくさんいます。6人とか7人作って、合計20年くらいずっと子どもを園に通わせていた長いお付き合いの親御さんもいます」
保護者の間で、子どもの卒園と同時に園を離れる寂しさは“やまなみロス”と呼ばれているそうだ。
子育てに感動する環境があるかどうか
園とずっとかかわっていたいというのは、子育てを長くつづけたいということと同義だろう。近年の日本では多くの労力と費用を要する育児は、できることなら避けたいという考えも一部にはあるが、やまなみこども園の保護者があえてそれをつづけたがる背景には何があるのか。
道枝はつづける。
「うちの園の親御さんは子育てを通して毎回異なる感動を得たいと思っているんじゃないでしょうか。子どもとの距離が近ければ近いほど、得られる感動は一人ひとりまったく異なるものです。第一子、第二子、第三子、第四子みんな違うから個別の感動がある。
親御さんたちはやまなみこども園があれば、その感動を他の園に預けるより何倍も得られると語っています。そこに何ものにも代えがたい喜びがあり、子どもだけでなく親としての成長もある、と。だから、みなさん、たくさん子どもを求めるのです。もっと産みたい、もっと育てたい、もっと通わせたいって。
基本的にはいつの時代も同じなんですよ。国は制度とかお金とかの話ばかりしていますが、そういうことじゃないんです。本来保育園がすべきことかどうかは別にして、親御さんが子育てに感動する環境があるか、その感動を分かち合える仲間がいるかが、もう1人子どもをほしいと思わせる上で重要なことなのです」
どんなに大変な仕事であっても、本人がそこにやりがいを見出し、成長と感動を仲間と共有できれば、ポジティブに取り組めるようになる。出産や子育てにおいてもそれは同じだというのだ。

