原因は違っても、治療は同じ
慢性腎臓病にはもともと、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎など、原因によっていろいろな病名がつけられ、進行した状態は慢性腎不全と呼ばれていました。
しかし、近年では、腎障害の存在と糸球体濾過量(GFR=Glomerular Filtration Rate)というものに基づき、慢性腎臓病(CKD=Chronic Kidney Disease)として包括的に捉えるようになりました。
たとえば、糖尿病の患者さんが腎臓を悪くしたときに、単純に糖尿病の合併症だけが原因なのか、高血圧などほかの原因も関わっているのかを明確にし、細かく「病名」をつけるためには、背中から細い針を刺して腎臓の組織を採取する、「腎生検」という危険な検査が必要です。
しかし、「そうまでして細かい病名をつけることに意味があるのか」というと、答えは「NO」です。原因はなんであれ、「腎臓が悪くなっている」という重大な事実があり、それに対して行なうべき治療は同じだからです。
だとしたら、できるだけ包括的に捉えたほうが一般の方に周知する意味でもわかりやすいし、行政での取り組みも効率的に行なえます。実際に、2020年からACジャパンが慢性腎臓病についてテレビで公共広告を始めました。
これは公益財団法人日本腎臓財団による啓蒙活動のひとつです。なお、これ以降、本稿では単純に「腎臓病」と記しますが、それは慢性腎臓病のことだと思ってください。
国の動きにまかせていたら間に合わない
ちなみに、こうした啓蒙活動がなされる背景には、次のような要素があります。
・透析を必要とする末期腎不全患者が増加し、医療費を圧迫している
・腎臓病は腎不全だけでなく、心疾患のリスクも有意に上げる
・腎臓病の患者さんが、これからも増加すると考えられる
・早期発見によって、進行を抑制したり治療したりすることも可能である
こうしたことが明確になって、医療界を含め社会全体で対策を立てていこうという動きが出てきたわけです。ただ、そうした国の動きにまかせていたら間に合わなくなってしまいます。
これほど医療が発達し、皆保険制度という恵まれた環境が整った日本において、治すことが非常に難しい病気が腎臓病。
現在、その腎臓病の患者さんが激増しています。世界的に有名な医学誌『ランセット』が2020年に発表したデータでは、2017年段階の日本人の腎臓病患者は2100万人。
成人の5人に1人が腎臓病だという計算になります。これは、糖尿病の1000万人よりずっと多く、まさに「国民病」ともいうべき事態です。

