タイミーの言い分は?
一方、タイミー広報は取材に対して文書で回答。一連の裁判は報道などを見る限り、被告側企業が出廷しなかったことから、事実関係が争われず、裁判所が個別の審理・判断を行うことなく、原告の請求をそのまま認めたいわゆる「欠席判決」だったとの認識を持っているとした。
そのうえで「個別事案における判決は特定の事実関係に基づいて行われるものであり、9月1日以前のキャンセルが一律に休業手当の支払いが必要になるものではないと考えています」などと述べ、賃金支払いの必要性の有無は、個別のケースごとに司法の判断にゆだねられるとの考えを示した。
また、スポットワーク協会は裁判の判決や識者らの指摘を受け、再びルールの見直しを行う予定だ。就業開始24時間前までの企業都合によるキャンセルは「やむを得ない事情による営業中止や大幅な仕事量の変化による募集人数の変更があったときには、解約が認められる場合がある」などとしたうえで、それまで可能だった「掲載ミス」は解約不可とする。キャンセル規定をさらに厳格化した形で、2026年5月より運用を始める。
同協会の後藤一重事務局長は「使用者(企業)からの解約は原則認められない、ということをあらためて強調しました」とする。
アプリを相手取った訴訟も検討する
しかし、最新のルールをもってしても、冒頭で紹介したAさんやBさんの“被害”は救済されない。Aさんがキャンセルされたのは正確には7時2分、勤務開始は翌日の8時で、就労開始の24時間58分前の解約だからだ。
Bさんの場合は、そもそもキャンセルできる件数に制限がない。企業都合のキャンセルの余地が残されている以上、文字通りルールの趣旨のスキマを縫ってくる一部の悪質企業は、今後もなくならないだろう。
牧野弁護士は「一方的な解雇を制限する法制度の趣旨に照らすと、営業中止や募集人員の変更といった企業都合による解約は無効と判断される可能性がある」と主張。現在、キャンセルを経験したワーカーらを原告とした集団訴訟の準備を進めているほか、今後はタイミーなどのプラットフォーマーを相手取った訴訟も検討したいとしたうえで、スキマバイトの“未来”について次のように語る。
「スポットワークは新しい、柔軟な働き方だと思います。健全な仕組みをつくるためにも、タイミーのようなプラットフォーマーには過去の未払い賃金の補償などを積極的に行う社会的な責任があるのではないでしょうか」
この間、一部のワーカーが声をあげたことで、キャンセルをめぐる状況は改善された。しかし、過去の未払い賃金の問題は放置され、最新のルールの中にも違法性が疑われる解約条件は残されたまま。原告の大学生が指摘する「アンフェアな仕組み」の解消はいまだ道半ばである。


