今、「3Dプリンタ」が大きな話題を呼んでいる。この現象は単なるブームに終わるのか、それともモノづくりを大きく変える可能性があるのか? 3Dプリンタを積極的に活用し、道を切り開く企業の最前線に迫った。
「3Dプリンタ革命」に火をつけたのは、2012年秋に出版された『MAKERS』だった。『ロングテール』や『フリー』などインターネットがもたらす経済社会の変革を的確にとらえたベストセラーの著者である、クリス・アンダーソンが描いたモノづくりの未来像といっていい。
この新たな潮流は、「新産業革命」と呼ぶにふさわしいインパクトを秘めている。
18世紀半ば、イギリスに始まる紡績や動力の世界的な発明が「第1次産業革命」とすれば、19世紀半ば以降、化学産業、石油精製、内燃機関、電気製品の発達といった製造業の変革が起きた時代が「第2次産業革命」となる。今日起きている3Dプリンタに代表される、デジタルの新しい胎動は「第3次産業革命」であると呼ぶ人も多い。では、実際どのような会社が、このツールを使って新しいビジネスチャンスをものにしようとしているのだろうか。
「魔法の箱」3Dプリンタ
JR山手線・神田駅から歩いて数分、入り組んだ路地の一角に、「立体造形工房 神田」の文字が窓に書かれた東京リスマチックの店舗がある。24時間総合印刷サービスを売りにする同社が、内神田にオープンした3次元(3D)プリンタによる立体造形のサービス拠点である。
入り口を入ると、正面に大きな机があり、その上にフィギュアやキャラクター模型などが雑然と置かれていた。女性のフィギュアに始まり、自由の女神や恐竜の置物、ジェット機の模型やモンキーレンチ……まで、さまざまな造形が一瞬にして客の目を引きつける。これらはすべて、3Dプリンタによって生み出された製品群だ。