「最適化」なのに経費は5.7倍
念のために確認しておきますが、それぞれの自治体では、これらの業務のほぼすべてで既にシステム化が行われていて、実際に運用されています。しかも、基幹系データを情報連携する必要から、実質的に自治体間での標準化が進みつつありました(データ標準レイアウト)。
少なくとも自治体の側には、国の標準仕様書に合わせて、まるごとリプレイスする必然性がありません。もしあるとすれば、国の法律や制度が変わる都度、いちいちシステムを修正する手間とお金が発生し、それが半端ないということです。
2025年1月29日、全国の中核市市長会(人口20万人以上の市のうち、申し出により政令で指定される市の市長で構成)は、総務省とデジタル庁に緊急要望をしています。それによると、国が進める標準化移行後の運用経費の平均は2.3倍となり、最大で5.7倍にもなるとのことです。これらは今のところ全て自治体の負担増となります。
仮に今後、システムの移行経費や運用経費などの全額が、国から自治体に支援されるとしても、国全体では膨大なコスト増になるはずです。
「デジタル化で行政の効率化」にならないワケ
国が唱えてきた「デジタル化による行政の効率化」とは、ますます乖離してしまうのです。マイナンバーカードと同じです。
システム移行作業中の2024年度だけでも、定額減税、特別徴収税額通知書の電子化、国税森林環境税の徴収など、大きな制度変更が次々と起きています。そのたびに移行作業が中断され、標準仕様書の修正を迫られます。こうして、5年間、延長されたのです。しかし、このようすでは、5年後にできるかどうかも、確たる見通しはありません。
これは国が進めるデジタル化にしばしば起こる宿命的な欠陥です。たとえば、企業が合併するときにはいずれかの企業のシステムを中軸にして改修するのが一般的です。ゼロから新しいシステムを作って、一斉にリプレイスする(フルスクラッチ開発)とエラーが頻出する可能性が高くなるからです。
しかし、国のシステム開発を担っているデジタル庁は、大手ITベンダーの複合体なので、どこかの特定企業が開発した既存システムを利用して改修するよりは、全く新しいシステムを開発してリプレイスする方向に傾きがちです。

