日本は兵を出さずに代わりに130億ドル(現在のレートで約1兆9500億円)を拠出したが、血を流さず金で片をつけようとしたとして、「小切手外交」と揶揄された。日本の政界関係者や外交官の多くがこの経験を屈辱と受け止めたと、ワシントン・ポストは伝えている。

あの屈辱を繰り返すまいと、日本は国際安全保障でより大きな役割を担う方向へ動き出した。高市氏を含む自民党タカ派が戦後の平和主義による制約を緩めにかかったのも、湾岸の苦い記憶があればこそだ。

だが皮肉なことに、その先の2026年で待っていたのは、中東の海域での軍事貢献を再び迫られるという、35年前と同じ板挟みだった。

しかも今回は、米海軍の掃海能力自体が落ちており、日本にかかる圧力は前回の比ではない。米外交専門誌のディプロマットによると、米海軍はバーレーンに配備していたアヴェンジャー級掃海艦4隻を退役させ、機雷戦に特化しない新型艦艇に置き換えつつある。機雷除去の専門戦力を自ら手放した格好だ。

イランがホルムズ海峡に機雷を敷設しかねない情勢のなか、アナリストらは米軍だけでは対処しきれないおそれがあると指摘する。そうなれば、米側が海上自衛隊を頼りにするのは当然だろう。世界有数の機雷掃海・探知能力を擁し、1991年の湾岸戦争停戦後にはペルシャ湾へ艦艇6隻・隊員511名の掃海部隊を送った実績もある。

海上自衛隊の自衛艦の艦尾でひるがえる自衛艦旗
写真=iStock.com/Takosan
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今回の首脳会談で掃海部隊の派遣が具体的な議題に上ったかは確認されていないが、米側が水面下で打診した可能性は十分にあると、ディプロマットは指摘する。

自衛隊派遣をかわしたのは一定の成果

もっとも、今回の首脳会談を一面的に「失敗」と断じるのは早計だ。日本にとって着実な成果もあった。

高市氏は軍事面での明確な約束を避けつつ、トランプ大統領から、「日本はNATOと違ってステップアップしている」という言葉を引き出した。ディプロマット誌は、法の支配を掲げ、力による解決を否定し続ける日本にとって、アメリカのイラン攻撃と整合性を確保するのは困難な状況であったと読み解く。

高市氏は「法律の範囲内で」行動すると繰り返し、NATO加盟国とは異なる憲法上の制約を盾に、ホルムズ海峡への自衛隊派遣要求をかわした。それでも同盟の結束は保ち、ひとまず会談を乗り切ったと同誌はみる。ただし記事は、問題は最終的にどこまで対応を迫られるかだ、とも釘を刺す。

ホルムズ海峡への自衛隊派遣の代わりに日本は、将来的に軍事力を強化すると約束したのではないか、との観測もある。米公共放送PBSが会談前に、日本は長距離ミサイルの配備加速、トランプ大統領肝いりのミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム」への参加、殺傷兵器の輸出解禁といった施策を示す方針だったと伝えている。

いずれもアメリカと軍事面で一体化を深めるが、トランプが求めるホルムズ海峡への即時対応とは性質が異なる。目先の派遣要求はかわした格好だが、日本はこうした施策を進めることで、再び対米依存を深めていくおそれもある。