一方で日本在留のミャンマー人を日本で採用・研修して帰国させ、就労させるケースもあるが、日本での労働経験のあるミャンマー人材のコストは、現地採用人材よりもベースで500ドル程度高くなる傾向がある。結果的に最低でも800~1200ドル程度のコストとなり、日本企業にとっては負担感が大きい。

以上、述べてきたように、現在のミャンマーでは、公務員・民間人含めて、賃金の上昇圧力の高まりが顕著になっている。海外企業も含めた人材獲得競争が激化していることから、当面は今の状況が続きそうだ。事前に、採用戦略をきちんと立案し、現地入りしてから右往左往しないように準備をする必要がある。

オフィス賃料が2年で5倍に

今のミャンマーの熱狂ぶりを象徴するのが不動産相場だ。極度の箱不足から、オフィス物件などの賃料相場は急騰。賃貸物件以外にも、土地(長期使用権)、コンドミニアムなどの所有物件も同様に高騰しており、また、供給不足の顕著なホテルなどの宿泊費の高騰も異常な水準だ。

ヤンゴン中心部にあるオフィスビル、サクラタワー(右)の賃料は2年で5倍に。

先般、私が独自に行った調査によれば、多くの日系企業の入居するヤンゴン市内のセドナホテル。JETRO、みずほ銀行、その他日系商社などが入居するホテルのオフィス棟。ここの相場は、月額70~75ドル/平方メートル程度だった。ヤンゴン中心部の高層オフィスタワーであるサクラタワー。三井住友銀行、NEC、NHKなどが入居している。ここの相場は、月額90~100ドル/平方メートル程度。サクラタワーの家賃は、一昨年は20ドル/平方メートル程度であったが、昨年から急騰、いっきに50ドルを超え、現在は100ドルまで高騰している。ここまで来ると、東京の丸の内並みの賃料相場であり、今のヤンゴンの不動産賃料相場の異常な高騰ぶりが分かる。

コンドミニアムを事務所にする日系企業も多いが、市内中心部のコンドミニアムは、2~3LDKくらいの面積で、月額1800~2800ドルが相場だ。ジャンクションスクエア近くのダイアモンドコンドミニアムにも日系企業のオフィスが多いが、どの部屋もおよそ月額賃料2000ドルを超える。ヤンゴンの商業の中心部であるダウンタウンのコンドミニアムも、1500ドル以下の物件を見つけるのは至難の業だ。