若者たちにとっては“合理的”

もう一人、デリヘル嬢のミレイ(源氏名、24歳)は、大学をやめた後にスカウトの紹介で業界に入った。月収は200万円を超える月もあるが、稼いだ金のほとんどを美容整形に注ぎ込んでいる。豊胸手術から顔の施術まで、総額は数百万円。クリニックはすべてスカウトの紹介だ。

清水さんが取材した風俗嬢に共通していたのは、生活のあらゆる局面をスカウトに頼るという習慣だった。美容整形の予約、店の相談、借金の対応。スカウトは何でも知っていて、すぐに動いてくれる。その依存関係が、結果として女性を業界に縛りつけている。

「捕食されている意識は、本人にはほとんどないんです。昔より風俗のハードルは確実に下がっていて、『こんな人が?』という人が普通に入ってくる。彼女たちもある意味、合理的にその世界を選んでいる。ただ、彼・彼女らの合理性そのものが歪んでいるのかもしれない」

歌舞伎町。壁一面がホストクラブの看板で埋め尽くされている
写真=iStock.com/sanniely
※写真はイメージです

現職警官すら取り込まれた

ナチュラルの組織防衛は、警察の内部にまで及んでいた。

2025年11月、警視庁暴力団対策課の現職警部補がナチュラルに捜査情報を漏洩していたとして逮捕された。自宅からは現金約900万円が見つかっている。

「ヤクザでも最近ここまでの話はない。警察官を取り込んで情報を抜くなんて、組織防衛のためなら本当に何でもやる。そのバイタリティには驚きました」(清水さん)

書籍によれば、ナチュラルの闇アプリには警察官の顔写真や行動パターンが共有され、新宿署管内の警察官シフトまで把握されていた形跡がある。メンバーが摘発された場合の対処マニュアルも整備されており、弁護士への即時連絡フロー、取り調べでの応答要領まで定められていた。

『捕食』では、今回のインタビューでは語られなかったナチュラルの独自の「闇アプリ」について詳細に記されている。
撮影=髙須力
捕食』では、今回のインタビューでは語られなかったナチュラルの独自の「闇アプリ」について詳細に記されている。

一方、警察側の動きは遅かった。2020年の歌舞伎町乱闘事件で会長を逮捕した際も、20日余りの勾留で釈放している。ナチュラルに対する本格的な捜査体制が組まれたのは、2023年以降のことだ。