取材当初は「マニアック」と見られていた
「NHKに入りたいというよりは、記者になりたくてたまたまNHKだった、という入り方なんです。組織にはよくしていただきましたし、大きな不満があったわけではない。ただ、あと10年いるとすると、取材現場からは離れて会社のために働くポジションに就くことになる。それにはあまり刺激を感じなかった」
組織内部での管理的な業務を打診され始めていた時期と、テレビ業界の変化を肌で感じていた時期が重なった。外部からの仕事の依頼も増えていた。
「私がNHK時代から感じていたのは、日本の既存メディアはノンフィクションとフィクションを厳密に分けすぎるということ。それは、ある意味でいいことでもありますが。もちろん、ファクトを浮き彫りにする緻密な取材が重要なのは当然なんですが、表現方法はもっといろんな形があっていい。
海外のジャーナリストからは『最終的に誰に届けたいんだ。届けることが目的じゃないのか』とよく言われていました。掘り起こした事実をどう伝えるのか、我々も進化する必要があると思うようになりました」
『捕食』は、最初から映像化を視野に入れて取材・執筆された。ノンフィクションの書籍として世に出し、さらにそれを元にドラマや映画を制作して、本を読まない層にも届ける。独立後最初の書籍で、これまで抱いていた思いを形にした格好だ。
ナチュラルの取材はNHK時代から少しずつ始めていた。だが当時、周囲の反応は薄かったという。
「マニアックな組織を追いかけているなという目で見られていましたね。警察にナチュラルの話をしても、詳しく知らない人が多かったぐらいです。ただ、誰も触っていないからこそやりたかった。いずれ世の中で大きな問題になるだろうという予感はあったんです」
独立後、最初に発表したのが2025年3月のフライデーの記事だった。その後、2025年11月に警察官の逮捕、2026年1月にトップの逮捕と事態は動き、ナチュラルの名は一気に広く知られることになった。
犯罪は社会の最先端を映す
ナチュラルの取材を通じて見えてきたのは何か。最後にそう問うと、清水さんはこう答えた。
「犯罪は世の中の最先端を表すんですよ。ツールもそうだし、稼ぎ方もそうだし、法の網をくぐる知恵もそう。常に法律の方が後追いになる。だから犯罪を取材していると、社会の空気の変化が一番よく見える」
「ナチュラルを攻撃するつもりで書いたわけじゃないんです。こういうものを社会が生み出しているという現状や背景を描きたかった。ナチュラルだけを潰しても、次が出てくる。なぜこれが生まれているのかを、もうちょっと社会全体で考えた方がいいのでは」
出来高制、完全歩合、暴力の外注、現金主義。ナチュラルの手法はどこまでも合理的だ。そしてそこに集まる若者たちもまた、自分なりの合理性でこの世界を選んでいる。かつて就職すれば安泰と言われた有名企業の内定を蹴ってでも。
その合理性が成り立ってしまう社会の側に、問題の根がある。



