普通の会社の「タイパ」に耐えられない
なぜ有名大学の学生が犯罪組織を選ぶのか。清水さんの分析はこうだ。
「彼らは別に大金持ちになって豪遊したいわけじゃないんですよ。意外にみんな安定志向。酒もあまり飲まない。ただ、普通の会社に入って15年、20年かけてようやく昇進して係長か課長か、というタイムパフォーマンスに耐えられない。
会社に入ったって潰れるかもしれないし、給料も上がらないかもしれない。それなら今バッと稼いで、ある程度貯めたら起業するなり別の仕事をするなりすればいい、という発想なんです」
清水さんによれば、彼らはSNSを通じて若くして成功した起業家の姿を日常的に目にしている。一方で、親世代は「30年間停滞してきた」ように映る。上の世代にあまり共感できていない、と清水さんは見ている。
しかもナチュラルでやっていることは、本人たちの感覚では明確な犯罪ではない。女性を風俗店に紹介して手数料を受け取る――職業安定法違反であり各地の迷惑防止条例にも抵触する――が、詐欺をするわけでも強盗に入るわけでもない。メンバーたちは「人材紹介業みたいなもの」と認識しているという。
「ずっとここにいる気はなくて、稼いだら起業するとか別の仕事をやるとか言っている。安定志向の裏返しで犯罪組織を選ぶ。一見理解できないんですけど、実際に話を聞くとそうなっている」
ナチュラル会長の正体
ナチュラルのトップである会長は、2026年1月に逮捕された小畑寛昭容疑者(41)だ。もともとは「木山」という通称で呼ばれていて、組織内では複数の偽名を名乗っている。
清水さんはこのトップの経営スタイルについてこう語る。
「ヤクザだったら下に任せて、アガリだけで優雅にやっているイメージでしょう。でもこの会長は自らコミットして、ほぼ現場に指示を出している。長時間のハードワークもいとわない。ベンチャー的だなと思いましたね」
2020年には住吉会系暴力団100人超と歌舞伎町で大乱闘を繰り広げた。幹部は「ヤクザがなんぼのもんじゃい」と公言し、SNSで暴力団を煽っていたという。乱闘後、数千万円を支払って和解したとされ、暴力団との共存関係を築いた。これを機にナチュラルは全国の繁華街に進出していった。
当時、警視庁の捜査員はナチュラルをこう見ていた。
「しょせんは若い奴ら中心のスカウトグループ。スカウトなんて学生あがりがイキっているだけだろうくらいに見ていた。現場も上層部も過小評価していた」。その「学生あがり」が、6年後には年間利益50億円の組織になっていた。

