総務課、プロ課、防衛部…

ナチュラルの内部には、約150人が所属する「本社」機能がある。一般企業同様、業務に応じてさまざまな部署が存在する。

例えば「総務課」は外部関連業務の全般、店舗からのスカウトバック(紹介料)の確認、集金、給料などの対応を行う。「プロ課」は警察への対策を専門に担う部署で、情報収集、組織防衛の方針策定、新人の研修や管理を受け持つ。名称自体が警察を「プロ」と呼ぶナチュラル独特の隠語に由来する。

「防衛部」は、捜査情報の収集や警察内部に協力者を仕立てる極秘工作を行っている。さらに「契約課」(新規契約店舗との交渉)、「アプリ課」(独自開発した闇アプリの運営)、「集金課」(全国数百店舗からの現金集金)、「サポート課」(各種トラブル対応)がある。

清水さんによれば、本社には営業畑で実績を積んだ経験者や、企業で社員の管理・研修を担当していた人物がいて、組織運営の中核を担っているという。ITスキルを持つ人材もおり、X(旧Twitter)上で反ナチュラルの発信をするアカウントへの攻撃や、内部の裏切り者の特定にも動く。

こうした「本社」の約150人が、約2000人の現場スカウトを統括している。

夜の新宿・歌舞伎町
写真=iStock.com/GoranQ
※写真はイメージです

有名大学の学生たちがハマる経緯

では、その現場のスカウトにはどんな人間がいるのか。清水さんが接触に成功した現役メンバー「佐伯」(偽名)は、誰もが知る有名大学の在学中に、友人を通じて誘われた。

書籍からその様子を一部紹介すると、佐伯は先輩から「おカネ稼げる仕事あるから、ちょっとだけでも顔出しなよ」と言われ、都内のある場所で説明を受けた。飲み屋で相当なご馳走になりながら話を聞いているうちに断りづらい雰囲気になり、「最悪、嫌になったらやめればいいだろう」という軽い気持ちでそのまま入った。同席していた同じ大学の学生3人が、その場でナチュラルに加入している。

『捕食』では、有名大学の若者がナチュラルにハマっていく様子がリアルに描かれている。
撮影=髙須力
『捕食』では、有名大学の若者がナチュラルにハマっていく様子がリアルに描かれている。

佐伯はナンパ経験すらなかったが、歌舞伎町での路上スカウト初日から女性と連絡先の交換に成功する。1カ月後に初めての給料を手渡しで受け取った。約10万円。4カ月後には月収100万円に達していた。

「ひとり女の子を捕まえるだけで、毎月その女性の稼ぎの約15パーセントが入ってくる仕組み」(清水さん)で、若者にとっては「おいしい仕事」となる。

佐伯のケースは特別ではないという。ナチュラルには早慶をはじめとする有名大学の学生や卒業生が多数在籍していることが確認されている。企業から内定を受けながら辞退し、ナチュラルに残る者もいる。しかも最近は「ナチュラル」の名を隠し、「クリア」「ホワイト」といった偽名で勧誘するため、入った時点では自分がどの組織に所属しているのか知らないメンバーも多いそうだ。