漢字・計算ドリルは「解くこと」が目的ではない
こうした「日常の中で脳を使う生活」は、家庭の中だけでなく、地域の活動の中にも見ることができます。地域の高齢者向けのサロンでは、漢字や計算のプリントに取り組む活動がよく行われています。こうした光景を見て、「家でドリルを解けば同じ効果があるのではないか」と考える方もいるかもしれません。しかし、実は大切なのはプリントの内容そのものではないのです。本当の価値は、人と集い、言葉を交わすことにあります。
他の人が問題を解く様子を見て刺激を受けたり、「これ、どうやるのかしら」と笑いながら相談したりする。「○○さんが風邪をひいたみたいだから様子を見に行こう」と声を掛け合う。こうした交流は、前頭葉をはじめ脳の多くの領域を活性化させます。
一人でドリルに向き合うよりも、人の中に身を置き、話し、笑い、意見を交わすことのほうが、脳にとってははるかに豊かな刺激になるのです。
「散歩」「立ち話」が脳に刺激を与え元気にする
ここまでお話ししてきたように、脳を活性化させるために、特別な勉強をする必要はありません。むしろ、日々の生活の中にこそ、優れた脳トレの機会が数多くあります。
たとえば、毎日の散歩も立派な脳トレになります。足を動かす運動野を使うだけでなく、道端に咲いている花に目を向けたり、「あの家、建て替えているな」と街の変化に気づいたりする。季節の移ろいを感じながら歩くことは、脳のさまざまな箇所に新しい刺激を与えてくれます。
さらに、散歩の途中で近所の人と「今日はいい天気ですね」「そのお花、綺麗ですね」と一言二言交わす。この立ち話も、実は脳をフル回転させています。相手の話を瞬時に理解し、自分の返事を考え、相手の表情を見ながら言葉を選ぶ。会話は、人間の脳が持つ多くの機能を同時に使う行為なのです。
ほかにも、「孫が遊びにくるから、お昼はあの子が好きなオムライスにしよう」とメニューを考えたり、天気予報を見て「夕方は冷えるから、上着を持って行こう」と服装を考えたりする。こうした日常の小さな判断や工夫の積み重ねが、脳にとって良い刺激になります。

