取引先訪問で気づかされたこと

そのひとつが、「他社の商品をずっと使い続けているので、一発注者の権限では簡単には変えられない」ということです。

たとえば、ファイルを欲しいというお客様のもとを訪問したところ、オフィスの棚一面にまったく同じデザインのファイルがびっしりと並んでいました。担当者の方にお話を伺うと、「デザインを統一したいので、今から別の会社のファイルに変えることはできない」ということでした。

また、「伝票は同じものでないと使い勝手が悪くなる」という意見もありました。アスクルのお客様は企業ですから、事務用品に求めるのは、仕事を効率的に行えることです。使い慣れたものを使いたいと考えるのは当然です。

このような事情がまったくわかっていなかったことに気づかされたのです。

こうしてお客様のお話を伺ううちに、私は、

「それでもやっぱり、プラスの商品を使ってほしい」
「プラスの社長や社員が何十年にもわたっていだいてきた悔しさを晴らしたい」

と思う一方で、

「私たちがするべきことは、お客様に喜んでいただくことではないか」
「たとえライバル会社の商品だったとしても、お客様が求めるなら取り扱ったほうがいいのではないか」

という考えを持つようになりました。両者のはざまで悩むようになったのです。

アスクルの物流センターにあるロゴマーク=2025年10月21日、東京都江戸川区
写真=共同通信社
アスクルの物流センターにあるロゴマーク=2025年10月21日、東京都江戸川区

「ライバル社の商品を売る」という決断

そうして私が出した結論は、プラスの商品だけでなく、お客様が求めるライバルメーカーの商品も売ることでした。

もちろん、アスクルやプラスにとってメリットがなければ意味がありませんが、勝算はありました。

最大手メーカーをはじめ、他社の商品も買えるようになれば、アスクルというサービス自体の魅力が高まり、利用するお客様の数が増える。すると、売上に占めるプラス製品の割合は減っても、プラス製品の売上は増えると考えたのです。

ただ、これはあくまでも私の楽観的な見方であり、悲観的に見れば、他社製品ばかりが売れて、プラスの製品が売れなくなることもあり得ます。そんな話が社内ですんなりと通るはずがありません。

役員会にはかると、予想通り、大反対をされました。

「プラス製品の直販チャネルとして立ち上げたアスクルで、なぜ他社製品を売るのか」
やすきに流れて、やるべきことをやっていないのではないか」

そういわれたのです。

特に最大手メーカーの商品を扱うことに関しては大きな反発を受け、「非国民だ」「国賊だ」と厳しいお叱りをいただきました。

しかし最終的には、私を含めたアスクルチームの情熱により、当初は大反対していた社長に決断していただき、最大手メーカーをはじめとしたライバルメーカーの事務用品を売ることができるようになりました。