印象派の絵は日本人と相性よし

しかし、人気の理由はそれだけではない。

印象派の絵には「予備知識」が要らないのだ。

モネがジヴェルニーの自宅に作った日本風の橋と睡蓮の池を描いた絵
モネがジヴェルニーの自宅に作った日本風の橋と睡蓮の池を描いた絵、1899年(画像=フィラデルフィア美術館/CC-PD-Mark/ Wikimedia Commons

従来の西洋絵画を理解するには、膨大な知識が必要だった。

ギリシャ神話とは?
聖書の物語とは?
この人物が持つ道具の意味は?
花が象徴するものは?
そんなふうに。

それに対して、印象派はシンプルだ。光の美しさ、水面の煌めき、風に揺れる花々――見たままを感じればいい。

自然の風景をただ楽しめばよい

西洋の「お約束」を知らない日本人にとって、これほど親しみやすい絵画はなかった。

モネの『睡蓮』を見てみよう。池に浮かぶ睡蓮、水面に映る空、揺らめく光と影。それだけだ。

ムンクは何を叫んでいるのか?
井上響『ムンクは何を叫んでいるのか?』(サンマーク出版)

神話も歴史も宗教も関係ない。ただ、美しい。

この「ただ美しい」という感覚は、実は日本の美意識とも通じている。桜を愛で、紅葉を楽しむ。理屈ではなく、瞬間の美しさを大切にする文化。

印象派が日本で愛される理由。

それはモネの作品の素晴らしさにあることに異論はない。

しかし、同時に歴史的背景もあった。モネの作品は日本人のDNAに刻まれた名画なのである。

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