今の暴力団は「マネ乞食」

その間、暴力団の首領が何をしていたかといえば、首領同士で紅白の胡蝶蘭を贈ったり贈られたりしていただけである。彼らより後の世代がどう食っていくか、まるで考えなかったこともあり、この間、暴力団が生み出した新しいシノギは皆無である。

これに比べ新興の半グレや匿流はオレオレ詐欺などの特殊詐欺やSNS利用の投資詐欺、危険ドラッグの密輸と密売、金インゴットの密輸など、その時々に食えるシノギを工夫してきた。

今では一部暴力団も特殊詐欺などを手がけているが、それは半グレの始めたシノギのいわばマネ乞食としてやっているだけだろう。

暴力団
写真=iStock.com/MikeyGen73
今の暴力団は「マネ乞食」(写真はイメージです)

ただ詐欺の被害者は詐欺のやり手側に暴力団組員が一人でもいると判明すれば、民事法廷で「使用者責任」を問うことができる。すなわち組長は被害者側の損害を賠償するハメに陥る危険が伴う。

よって多くの暴力団では組員が特殊詐欺に関わることを禁止している。トップが損害賠償という被害を被らないためである。

特殊詐欺のほうが断然儲かる

暴力団の手がけるみかじめ、用心棒代は今1万、10万円の単位である。最近のニュースによれば、大分市で山口組と関係のある35歳の男が同市都町みやこまちの飲食店の女性に因縁をつけた上、月6万円のみかじめを払えと要求して警察から中止命令を受けたという。

やくざは本当に「必要悪」だったのか
溝口敦『やくざは本当に「必要悪」だったのか』(講談社+α新書)

かと思えば、名古屋市の男(73)は警察官をかたる詐欺犯から1億円以上を騙し取られたあげく、自ら特殊詐欺の受け子になって、愛知県警に逮捕された。

やくざの仕切るみかじめでは6万円、他方半グレや匿流が手がける特殊詐欺では1億円――、明白に流れるカネの額が違うのだ。

暴力団がカネに詰まり、終焉を迎えるのは当然だが、生き残り策として残るのは覚醒剤の密輸・密売だけだろう。乱用者の心身を損なう薬物を商うのは倫理的に問題が多すぎるが、それでも特定の人が欲する物を売って何が悪いと開き直ることは可能だろう。

カナダやオランダ、ニュージーランドなどにはハームリダクションといって、依存者に少量の薬物を摂らせながら薬物依存から抜け出させようとする法律と施策がある。やくざはそうした例を心頼みに覚醒剤密売を自分の中で合理化するかもしれない。

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