第3の習慣は「重要事項を優先する」。これも原文を参照すると“Put First Things First”で、「第1のものを第1に」が直訳になる。この項はいかに物事を効率的に行うかについて焦点を当てている。
とかく私たちは重要かどうかを考慮せず、緊急な事柄だけに走りがちになる。時計に踊らされてコンパスを忘れてしまうのだ。
縦軸に重要か否か、横軸に緊急か否かをとったマトリックス図を描いてみると「重要・緊急でない」領域がある。タイムマネジメントのカギになるのはこの部分である。
我々の研修で「仮に1日が25時間だったら、追加の1時間で何をするか(寝るのは除外)」と質問をすると、家族関係や勉強、運動などの答えが出てくる。次に「それはマトリックスのどこに入るか」と尋ねると、ほとんどが「重要・緊急でない」領域に入る。
「仕事で最も効果性を発揮するために取り組むべき課題は何か」という質問でも同様だ。
人生でも仕事でも効果性を高めるためには「重要・緊急でない」領域の活動が大事だが、そこに多くの時間を費やせないでいるのが多くの人の現状なのである。“Put First Things First”を実践するには、先にスケジュールの中に「重要・緊急でない」ものを組み込まなければいけない。1日を分単位に直すと1440分ある。そして、1日の1%は15分ほど。どんなに忙しいときでも1日の1%でいいから、「重要・緊急でない」領域に時間を使うべきである。
相手との信頼関係の築き方
すでに説明したように第4から第6の習慣は「公的成功」に属する。そこに入る前に「信頼残高」の原則にも触れておこう。
これは初めて会った相手とお互いの心の中に信頼の口座をつくり、よいことをすれば信頼の預け入れがなされ、悪いことや間違ったことをすれば信頼が引き出されるという、人と人との関係において築かれた信頼の水準を表す比喩である。ただし、信頼残高は銀行口座と違ってマイナスになることもあるし、マイナス100を差し引きゼロにするにはプラス300や500のことをやらないといけない。
良好な人間関係は継続的に信頼の預け入れを行うことで構築される。そうなればコミュニケーションは効果的になり、必要とあれば信頼残高を何度でも頼りにすることができる。