摂取直後に「体の燃料」になるオイル

MCTとは「中鎖脂肪酸(Medium Chain Triglycerides)」のこと。特に炭素数8(C8:カプリル酸)と炭素数10(C10:カプリン酸)の組み合わせは、ココナッツオイルよりもはるかに早くケトン体を生成することが知られています。

金森重樹『なぜヒトは脂質で痩せるのか』(扶桑社新書)
金森重樹『なぜヒトは脂質で痩せるのか』(扶桑社新書)

なぜか? 中鎖脂肪酸は消化吸収がスピーディーで、門脈を通じて直接肝臓に運ばれ、即座にβ酸化されてケトン体へ変換されるからです。摂ったらすぐ燃料になる――まさに「ケトスイッチ」を押すような存在なのです。

実際、研究でも「C8+C10を含むMCTオイルは、ココナッツオイルよりも迅速に血中ケトン体濃度を上げる」と報告されています。ココナッツオイルにも中鎖脂肪酸は含まれていますが、その多くは炭素数12のラウリン酸(C12)。

これは“中鎖”と呼ばれつつも代謝的には長鎖脂肪酸に近く、胆汁酸で乳化され、カイロミクロンに組み込まれてリンパ系を経由し、全身を巡った後に肝臓で分解されてからケトン体に再合成されます。つまり「一度遠回りしてからケトン体になる」ため、生成速度はどうしても遅くなるのです。

この違いが、MCTオイルとココナッツオイルの決定的な差。C8は即効性があり、摂取後すぐに血中ケトン体を押し上げます。C10はやや遅いものの持続的にケトン体生成をサポートします。両者を組み合わせたMCTオイルは「導入期のブースター」として最適なんですね。

対してココナッツオイルは健康効果や美容面では優秀ですが、ケトン体生成のスピードではMCTオイルに軍配が上がります。

MCTオイルはあくまで「導入期のオプション」

ただし、ここで誤解してはいけないのは「MCTオイルはずっと必須ではない」ということ。ケトーシスに入ってしまえば、体は脂質をメイン燃料として自走できるようになります。つまり、MCTオイルは導入期にこそ強力な助っ人ですが、定着後は必須ではなく、必要に応じて取り入れる“オプション”に過ぎません。

編集者:「じゃあ、MCTオイルは最初だけでいいんですね?」
僕:「そう。ケトに入るまでのブースター。入ってしまえば脂質代謝は自走するからね」

この視点を持つと、MCTオイルの役割がクリアになります。断糖高脂質食の導入期に「ケトスイッチ」を押すために活用し、安定してからはライフスタイルに合わせて使う。長鎖脂肪酸との違いを理解すれば、「なぜMCTオイルがケトジェニック導入に有効なのか」が一目で納得できるはずです。

研究ではMCTオイル摂取が脳波の覚醒度を高め、認知機能改善に寄与する可能性も報告されています。ダイエットだけでなく認知症予防の観点からも注目のアイテムです。