そして、新興上場企業で特に注意したいのは、自己資本比率に占める株主資本のパーセンテージです。特に(資本金+資本準備金)÷自己資本×100とした場合に、30%以上になる場合は異常値と考えられ、架空増資によって資本金を水増ししている可能性もあります。

「危ない会社」チェックリスト
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「危ない会社」チェックリスト

「よりたくましく働く」ための全課題 次は、業種・地域。トヨタ自動車を例に挙げてみましょう。業績を大幅に下方修正するなど同社は低調ですが、このニュースによってお膝元である東海地区は連鎖的に大きな打撃を受けます。また、自動車業界全体にも余波があるでしょう。このように業界・地域をリードしている企業の損益は、確実に末端までじわじわと影響していきますので、ウオッチしておく必要があります。

そして、忘れがちなのですが非常に重要なのが担当営業マンからの情報です。こんな話があります。あるとき、取引先のB社が突然倒産しました。担当営業マンである若手社員に「最近B社に変わった様子はなかったか」と上司が聞くと、「そういえば何度か銀行員らしき人を見かけました」と答えたそうです。銀行員が会社を訪ねてくるのは、伸び盛りなら営業もありえますが、さもなくばカネを返してもらいたいときです。もし上司がその情報を知っていたなら、おかしいなと思ったはず。経験の浅い若手であっても、気づいたことは何でも報告させる体制をつくっておくことも大事です。

たとえば「見知らぬ人が社長室に出入りしていた」「キーパーソンが辞めた」「本社以外の事務所を見せてくれなくなった」「倉庫の在庫が増えている気がする」など、ちょっとしたことでいい。普段から自社の営業マンに、定点観測とマメな報告をさせるクセをつけさせましょう。

さて、冒頭のストーリーの種明かしです。支店長が粉飾された決算書だと気づいたのは、社長が中身を確認したからです。決算書を渡すとき、普通は表紙の「平成○年度」の部分を見れば事足りるはず。中を開いたのは、間違えて“本物の決算書”を渡していないかどうかを確認するためだったんですね。

「この会社、何か変だな」という気づきを持てるか持てないか。そうしたリスクを回避する本能を磨いてください。

(西川留美=構成 浜村多恵=撮影)