営業部隊が代々蓄積した詳細なデータを使う
1965年にアサヒビールに入社した私は、最初の3年間以外はずっと営業。本社とは縁遠い地方ばかりで、しかも関東などアサヒの弱い地域が中心だった。今でこそトップメーカーだが、当時は苦しい状態が続いていた。何しろ、ビール市場全体の伸びとは裏腹に、アサヒのシェアは落ちていたのだ。
一般家庭向けにはなかなか商品が動かないため、柱は業務向け。営業が飲食店や飲食店にビールを納める酒販店や卸を回り、人間関係でお客様をつなぎ留めていた。それでも、上得意先の飲食店から取引を打ち切られた経験は何度もあった。
「荻田さんには悪いんだけど、もうアサヒを扱うのをやめるよ」――こう言われてしまったとき、どうすべきか。
まず、相手に「なぜですか」と問いかける。当たり前だが、断る理由がわからなければ、その後の対応ができない。プレッシャーはかかるが、決して逃げてはいけない。当時の我々の場合、商品力が弱いという明確な理由はあった。だが、本社に文句を言っても始まらない。資金不足で、今のように新商品を次々と開発する余力はなかったからだ。
そして、理由を聞いた後は、「何をおっしゃるのですか。引き続きお願いしますよ」と、自分の意思を明確に表明する。この2つは必須である。
それでも不調に終わったら、次はそのお店に影響力を持つ人に説得してもらう。