「3つの準備」から“いくら必要になるのか”を導く

老後資金に関する漠然とした不安は、具体的な準備をすることで軽減できます。たとえば、以下のような(1)〜(3)を描いておくとよいでしょう。

(1)住宅ローンなどの借金は、年金受給開始前に完済しておく
(2)年金で暮らせるお金の計画を立てる
(3)「子や孫への遺産」はいったん脇に置く(そのときの状況で柔軟に考える)

足りない部分がわかれば、「あといくら必要なのか」「毎月いくら補塡すればいいのか」が明確になります。現状を知ることで、家計のどこを整えればよいのかを自然に判断できるようになります。

持ち家があっても現金がこころもとない状態になった場合には、「リバースモーゲージ」など、自宅を担保にした借入制度があります。生きている間は元本の返済はなく、利息のみを支払います。亡くなった後に担保にしていた自宅を売却して一括返済する仕組みですが、利息が高めに設定されることも多く、仕組みやリスクを十分に理解しないまま利用すると、かえって家計を圧迫する可能性があります。

この方法に頼る前に考えたいのは、資産の多くが自宅という形で固定されている状態です。世帯年収1000万円の家庭では、住宅ローンを組み、都市部で70平米前後・5000万円〜7000万円のマンションを選ぶケースが少なくありません。

その結果、家計のバランスシートが自宅という不動産に大きく偏る構造になりがちです。老後は自宅を売却して小さな住まいに住み替える、あるいは郊外へ移るなど、よりシンプルで確実な方法を検討することも一つの選択肢です。

70歳まで年金繰り下げで「42%増」

「年金の受け取りを遅らせたほうが得というのは本当ですか」という相談を受けることがあります。答えは「YES」です。

電卓、年金手帳、お金
写真=iStock.com/years
※写真はイメージです

70歳まで年金の受け取りを遅らせると42%増える仕組みになっています。今50歳の方なら、65歳で年金を受け取り始めるまで15年、70歳まで働くなら20年。まだまだ老後の資金や暮らし方を考え準備できる時間はあります(2025年11月時点)。

「長生きリスク」という言葉があります。その言葉どおり、長生きすることで生じるリスクのことです。そう聞くと不安に感じるかもしれません。しかし、ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授が著書『ライフ・シフト』(東洋経済新報社刊)で示したデータによれば、1970年代生まれ、現在50代の人々が90歳まで生きる確率は男性41%、女性67%です。むやみに恐れるのではなく、どう生きたいかを前向きに考えるきっかけにしたいところです。

そのうえで、自分らしい人生の土台として「お金とどう向き合うか」を考えることが、とても大事になってきます。

共働き夫婦が60歳以降に受け取るお金には、大きく3つの柱があります。

(1)公的年金
(2)会社から受け取る退職金や企業年金
(3)自分で準備してきたお金(預貯金・投資信託などの金融資産)

これらをどう組み合わせて、どのタイミングで、どのくらい使っていくのか。その設計図を描くことが、安心して老後を迎えるための第一歩です。年金の受け取りを繰り下げれば増額されることを踏まえて、人生100年時代を見据えて、「いつから」「どのくらい」受け取るかを設計することが、老後の安心につながります。