検査・薬の全額自己負担化で起こること
3.経済力によって医療格差が生じる危険
インフルエンザの検査やタミフルなどの抗ウイルス剤が市販化されることによる「社会的な副作用」にはさらに重要かつ心配なものがあります。
それは経済力によって医療格差が拡大する懸念です。
発熱者の治療の「主たる現場」が医療機関から街場のドラッグストアに移行していくと、これまで保険診療によって抑えられていた個人の負担が大きく増えることになります。
もちろん収入が多く生活に余裕のある人であれば、なんら心配はないでしょう。しかし、現在でも窓口での支払いに負担を感じている人にとっては、「タミフルの市販化」はインフルエンザに感染してもあきらめるしかない、ということにもなりかねません。検査も薬も全額自己負担になるからです。
先述したように「寝ていれば治る」人もいますが、重症化リスクを抱えていない人でも、脳症をおこしたり脱水になったりして全身状態が急変することもありえます。
そのような兆候を見逃さず早期発見するためにも、医療機関の関与できないところでインフルエンザの管理を自己責任にゆだねる政策をすすめることは、これまでのわが国の医療水準を大きく低下させることになるでしょう。
「医療費削減」論に潜む盲点
そもそも、なぜこのように「インフルエンザ治療の自己責任化」をすすめようとしているのか。もちろん国が私たちの「利便性」に配慮してくれての政策ではありません。
ズバリ、医療費削減がその理由です。
健康保険組合連合会(健保連)が過去に実施した、インフルエンザ診療にかんするレセプトデータ(診療報酬明細書)に基づく詳細な分析調査によれば、薬剤費は年間223億〜480億円、検査キット費用は年間301億〜471億円、それに初診・再診料、処方箋料、さらには重症化による入院費用を合算した全体医療費は、年間1000億〜1500億円との推計があります。
「インフルエンザ治療の自己責任化」を推進すれば、単純計算でこれらの年間医療費が削減されることが期待できるというワケです。(医療費削減論者は、目先の削減によって診断や治療が遅れ、重症者が増えることがむしろ医療費増大につながる可能性については見て見ぬふりをすることがほとんどです)
そしてもし今後「タミフル市販化」が実施に移されれば、昨年大きな問題を巻き起こした「OTC“類似薬”(私は「OTC“本家薬”」と命名)の保険外し」の議論にも間違いなくかかわってくることになるでしょう。(関連記事:「現役医師『国家的詐欺と言っても過言ではない』…維新との連立で高市新政権が抱えることになった“地雷”の正体」)
「タミフルは、もうドラッグストアで買える薬なのだから、医療機関で処方された場合も保険外(自費)にしてもいいよね」となりうるわけです。

