「タミフル市販化」3つの副作用

「副作用」には大きくわけて3種類あります。

1.診断の間違い、遅れ、重要な疾患を見落とす危険

ご存じの方も少なくないと思いますが、インフルエンザの迅速診断キットは間違うことがあります。検査をして「陰性」であっても、検出されなかっただけでじつは感染していた、ということも全然珍しいことではありません。「陰性」の結果に「罹っていない」との自己判断をしてしまうことで、診断が遅れてしまう可能性があります。

多くの健康な人であれば、数日寝込むだけで自然治癒してしまうでしょうが、基礎疾患をもっている人や、高齢者、小児などでは診断の遅れが命取りとなってしまう危険があります。

また発症からしばらく経った再検査で「陽性」になった場合に、自己判断でタミフルを市販で買う人も出てくるかもしれません。しかしこの薬剤は発症後48時間(2日)以内に使用を開始することが原則。それ以上の時間を経過したあとから飲み始めても効果は期待できません。

また検査キットで陰性でも「インフルエンザが怖いから、念のためにタミフルを買って飲んでおこう」と考える人も、とくに流行期には多くなることが予想されます。

このように効果が期待できない時点から服用を開始したり、必要ないのに念のためにと服用したりといった無駄に服用する人が増えてしまえば、本当に必要な人に薬剤が回らなくなることにもつながります。

体温計で熱を測る人
写真=iStock.com/Milos Dimic
※写真はイメージです

また「急な発熱=インフルエンザ」と思い込んで、自己判断で購入したタミフルでしのいでいたのに、いっこうに解熱しないと受診したところ、インフルエンザの自己診断が「誤診」で、じつは肺炎や急性腎盂腎炎など重症化すると命にかかわる疾患であることが判明するという、恐ろしい事態が引き起こされる可能性も十分にありえます。

「タミフルを飲まないと治らない」のウソ

2.耐性ウイルスの発生、感染・流行拡大の危険

こうしたタミフルの不適切な使い方が広がると、個人だけでなく社会にも大きな「副作用」をもたらしかねません。ひとつは「耐性ウイルス」の問題です。タミフルをはじめとした抗ウイルス剤は、重症化リスクのある人に恩恵をもたらしますが、先述したように、もともと健康な人であれば必ずしも使用する必要のない薬剤です。

「タミフルを飲まないと治らない」と思っている人もいますが、基本は自然治癒する疾患。日本がこれらの薬を世界で一番使っているとの指摘もあります。そうなると危惧されるのが「耐性ウイルス」の発生です。タミフルに耐性をもつウイルスが蔓延してしまうと、重症化リスクのある人たちを救命することが困難となってしまうでしょう。

もうひとつ心配なのが、タミフルを使ったことで早期に症状が緩和した人が、まだ感染力が残った状態で学校や会社に行ってしまうことです。じっさいの医療現場でも、こういった患者さんはたびたび経験します。

こうした個人の行動が、周囲に感染を広げて大流行につながるリスクを引き起こすのです。医療機関では、感染後の行動について十分説明しますが、個人で診断と治療がおこなわれるようになってしまうと、インフルエンザにかんする正しい理解が行き届かなくなり、こうした思わぬ原因による流行拡大を生じさせかねません。