2回目は劇的にコミュニケーションが変わる

【山口】一方、患者は全く納得していない。うわーっと説明されただけで、何も理解できていないんですから。

【武中】頭に詰め込んだ知識を口から出しているだけなんです。ただ、若いときはぼくもそうだったかもしれません。だから若い先生には、患者さんと会話のキャッチボールをしなさい、理解されているかどうか確認しながら進めるようにと言っていますが……。

【山口】医療知識、経験に加えて、医師に限らず、今の若い人は自分たちと違った世代の人たちと付き合いをしない傾向があります。

【武中】さらに医学部ブームとか言われて、偏差値重視になり、コミュニケーションを苦手とする学生も多い。

【山口】高校や予備校の教師が、偏差値が高い学生に医学部進学を薦めると聞きます。しかし、患者と向きあう臨床医は、子どもの頃から培ったコミュニケーション能力も必要。ただ、模擬患者による我々の「医療面接セミナー」などで、ある程度の改善は可能です。

【武中】模擬患者のリアルな感想を研修医に伝えるとショックを受けませんか?

【山口】普通に生活していると、「あなたのコミュニケーションはここに問題あります」なんて指摘されることはないです(笑い)。医師はみなさん賢いですから、2回目は劇的にコミュニケーションが変わる方が多い。

「案内見学」「自由見学」「受診」をする「病院探検隊」

【武中】今回、山口さんと対談するということでいろいろと調べていたら、とりだい病院が2003年にCOMLの「病院探検隊」を受け入れていることを知りました。

【山口】国立大学病院第1号でした。(大学病院を舞台とした山崎豊子原作の長編小説)“白い巨塔”である大学病院から依頼が来て、驚いたことを覚えています(笑い)。

鳥取大学医学部附属病院の武中篤病院長
鳥取大学医学部附属病院の武中篤病院長

【武中】病院探検隊ではどのようなことをなさっているのですか?

【山口】「案内見学」「自由見学」「受診」という3つの役割に分かれます。受診は、他の患者に交じって我々が受診します。抜き打ち検査のようなものなので、病院から依頼があったときのみ行います。とはいえ、ほとんどの病院から依頼があります。

【武中】では、山口さんも、このとりだい病院で受診されたのですか?

【山口】もちろん(笑い)。〈胸痛〉〈総合診療外来〉で受診しました。

【武中】(当時の資料を見ながら)〈受付で保険証を忘れたことを伝えると、対応していたスタッフは途端に困惑した表情になり、まるで尋問のように、疑いを前提として質問をされた〉と書いてありますね。

【山口】保険証を出すとCOMLの人間だと分かってしまいますから。

【武中】なるほど、そこまで徹底しているんですね。